2011年 05月 20日
福島の原発事故の問題で、政府や東電が情報統制、もしくは隠蔽を行っていると言われていますが、実際問題、情報の統制というのは大変難しいと思います。例えば昨年の海上保安庁のビデオ映像流出事案を見ていても、もしあれを隠し通すのであれば、ビデオが撮影された時点で映像に「秘」をかけて封印、関係者全員に緘口令を布く必要がありますが、それでもわが国では国家機密を漏らしても国家公務員の守秘義務違反で1年以下の懲役、または50万円以下の罰金ですので、これを破る方が出てくるかもしれません。いずれにしても政府の実際の対応は、映像データは1か月以上放置されており、国交相が映像の厳重管理を命じた後も一部の国会議員に映像が公開され、議員の口から内容がマスコミに漏れており、これはとても情報統制とは言えないものであります。
情報を洩れないように統制しようとすれば、戦前の日本のように軍機保護法や国防保安法のような極刑もある機密法を制定し、出版法や国家総動員法によって言論を統制、国民への情報発信は大本営発表を通じて、という徹底したやり方でもしないと情報は必ず洩れます。有名な1944年10月の台湾沖航空戦において、日本海軍は対峙した米海軍航空母艦16中、1隻も撃沈することができませんでした。ところが最前線からの戦果報告は撃沈19隻(!)、海軍軍令部の戦果判断は4-5隻撃沈でしたが、大本営発表は11隻撃沈と公表してしまいます。大本営が情報を統制し、過大な戦果を公表していたのはよく知られていますが、これほど現実から乖離した発表は稀であり、あの陸軍ですらこの大本営発表に騙されて散々な目に遭うことになります。
戦前ならばこのような形の情報統制は可能でしたが、現在のネット社会において、上記のような形の統制はほぼ不可能となっています。すなわちいくら現在の政府が情報統制や隠蔽を行おうとしても、どこからか必ず正しい情報が漏れだしてしまうため、結局は政府の信頼を失墜させる結果にしかなりません。「この事件の背後では政府が情報を操っている」などというのはもはや過去の話か映画の脚本になりつつあります。
ただし情報統制や隠蔽というと聞こえが悪いですが、政府が国家機密を指定して保管するのは、国家の安全保障や国益に損害を与えないようにするためであり、ひいては国民の安全や利益を守るためでもあります。例えば核兵器の設計図がテロリストに流出すれば、それは危険極まりないことになるので、こういった情報は機密として扱われることになります。政府は管理すべき情報は管理しないといけないのに、現状では統制どころか管理できていないことが問題であります。ちなみにアメリカであれば核物質及び核施設に関する事項は機密にあたりますので、アメリカで同様の事故があればもちろんのように情報管理が行われ、開示すべき情報と秘匿すべき情報に分けて扱われるでしょう。
さらに言えば、機密以外の情報はできる限り早急に開示すべきであります。「パニックを行さないため」正しい情報を公開しないというのは理由にならず、また米国シカゴの劇場のケースが引き合いに出されるように、パニックを恐れて「劇場が火事」という情報を隠蔽した結果、より多くの犠牲者を出してしまうということもあります。「国民に(原発に関する)正しい情報を与えるとパニックになる」というのはある意味、政府側の思い込みなのかもしれません。
現在、政府や東電が情報を小出しにしているのは、現場から確実な情報が入ってこなかったせいか、官邸に情報を精査できるスタッフがいないせいか、その時々の判断で恣意的に情報を出したり出さなかったりしているのか、様々な可能性が考えられますが、いずれにしても重要なのは情報統制とは逆の意味で、情報公開のルールを作っておくことなのでしょう。政府、東電、保安院などがばらばらに行っている会見を一本化するなり、国民や海外向けの情報発信を積極的に行うなり、制度面の整備が急務でしょう。ルールや制度さえしっかり作っておけば、リーダーが誰であれ一定の効果は期待できるはずです。政府が的確な情報管理を行えないということは、日本の信頼低下を招き、ひいては国益を害するという危機感を持つべきなのではないでしょうか。
情報を洩れないように統制しようとすれば、戦前の日本のように軍機保護法や国防保安法のような極刑もある機密法を制定し、出版法や国家総動員法によって言論を統制、国民への情報発信は大本営発表を通じて、という徹底したやり方でもしないと情報は必ず洩れます。有名な1944年10月の台湾沖航空戦において、日本海軍は対峙した米海軍航空母艦16中、1隻も撃沈することができませんでした。ところが最前線からの戦果報告は撃沈19隻(!)、海軍軍令部の戦果判断は4-5隻撃沈でしたが、大本営発表は11隻撃沈と公表してしまいます。大本営が情報を統制し、過大な戦果を公表していたのはよく知られていますが、これほど現実から乖離した発表は稀であり、あの陸軍ですらこの大本営発表に騙されて散々な目に遭うことになります。
戦前ならばこのような形の情報統制は可能でしたが、現在のネット社会において、上記のような形の統制はほぼ不可能となっています。すなわちいくら現在の政府が情報統制や隠蔽を行おうとしても、どこからか必ず正しい情報が漏れだしてしまうため、結局は政府の信頼を失墜させる結果にしかなりません。「この事件の背後では政府が情報を操っている」などというのはもはや過去の話か映画の脚本になりつつあります。
ただし情報統制や隠蔽というと聞こえが悪いですが、政府が国家機密を指定して保管するのは、国家の安全保障や国益に損害を与えないようにするためであり、ひいては国民の安全や利益を守るためでもあります。例えば核兵器の設計図がテロリストに流出すれば、それは危険極まりないことになるので、こういった情報は機密として扱われることになります。政府は管理すべき情報は管理しないといけないのに、現状では統制どころか管理できていないことが問題であります。ちなみにアメリカであれば核物質及び核施設に関する事項は機密にあたりますので、アメリカで同様の事故があればもちろんのように情報管理が行われ、開示すべき情報と秘匿すべき情報に分けて扱われるでしょう。
さらに言えば、機密以外の情報はできる限り早急に開示すべきであります。「パニックを行さないため」正しい情報を公開しないというのは理由にならず、また米国シカゴの劇場のケースが引き合いに出されるように、パニックを恐れて「劇場が火事」という情報を隠蔽した結果、より多くの犠牲者を出してしまうということもあります。「国民に(原発に関する)正しい情報を与えるとパニックになる」というのはある意味、政府側の思い込みなのかもしれません。
現在、政府や東電が情報を小出しにしているのは、現場から確実な情報が入ってこなかったせいか、官邸に情報を精査できるスタッフがいないせいか、その時々の判断で恣意的に情報を出したり出さなかったりしているのか、様々な可能性が考えられますが、いずれにしても重要なのは情報統制とは逆の意味で、情報公開のルールを作っておくことなのでしょう。政府、東電、保安院などがばらばらに行っている会見を一本化するなり、国民や海外向けの情報発信を積極的に行うなり、制度面の整備が急務でしょう。ルールや制度さえしっかり作っておけば、リーダーが誰であれ一定の効果は期待できるはずです。政府が的確な情報管理を行えないということは、日本の信頼低下を招き、ひいては国益を害するという危機感を持つべきなのではないでしょうか。
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by chatnoir009
| 2011-05-20 22:16
| インテリジェンス