バトラー・レポート20周年
2024年 05月 11日
本日のSIGのお題は、20年目のバトラー・レポートでした。バトラー・レポートは、2003年のイラク戦争のきっかけとなりました、同国の大量破壊兵器の存在について、英国の合同情報委員会(JIC)が誤った報告書を上げてしまったことについての調査報告書になります。従来の解釈では、インテリジェンスを統括するJICが、当時のブレア政権に押し切られ、政府が要求する線、つまりイラクが大量破壊兵器を所有しているという前提で、誤った情報を上げてしまったことが失敗とされ、政策と情報の関係が上手くいかなった事例としてよく取り上げられます。
今回はこのレポートを再検証するということで、元英国外務連邦省の対テロ専門家のスザンヌ・レイン氏が、独自の解釈を披露してくれました。レイン氏も英国のインテリジェンス・コミュニティの一員でしたので、その説明は説得力があるのですが、結局、インテリジェンスには不確実性があり、時には誤っていることもあるので、それを時の政権がどう使うかは、政治の責任で行うべき、みたいな流れでした。インテリジェンスが間違っているリスクはもちろんあるのだが、何もしないよりは良い、ということで、日本には耳の痛い話ではありました。研究会で「その通りだ」と援護していた方がいらっしゃったので、よく見たらなんと元GCHQ長官のサー・デヴィッド・オマンドだったので、ちょっとびっくりしました。
by chatnoir009
| 2024-05-11 03:22
| インテリジェンス