Code Girls
2021年 04月 23日
本書は2017年に米国で出版されて大きな反響を呼びました。その内容は第二次世界大戦中に米陸海軍の暗号解読組織(SISとOP-20G)に勤務していた1万人を越える女性暗号解読官(コード・ガールズ)に焦点を当てたものです。戦後、彼女たちは秘密保持の規定に従い、誰にも活動内容を話さなかったため、その詳細は良くわかっていなかったのですが、最近になって国家安全保障局(NSA)がコード・ガールズについての秘密規定を緩やかにしたようで、本書が執筆されたようです。私は長らく、米軍の暗号解読も男性が中心でやっていたような印象を勝手に持っていたのですが、本書を読んでそれが思い込みだったということを悟りました。例えば本書によると1940年9月20日に日本の外交暗号「パープル」が初めて解読されることになるのですが、これは米陸軍の伝説的解読官、ウィリアム・フリードマンの手によるものではなく、その弟子の女性解読官、ジュネビーブ・マリー・グローチャンによるものだったようです。さらに日本陸軍の船舶暗号二号(2468コード)を初めて理論的に解読したのも、男女7人からなるチームであり、それは1943年4月6日深夜から7日未明のことだったと記されています。そして1945年8月14日、日本政府はスイスの加瀬俊一公使に対して、連合国からのポツダム宣言を受け入れ、停戦に同意する旨の暗号通信を送っていますが、この暗号通信を解読したのも女性暗号解読官、バージニア・アダーホールドだったそうです。彼女は日本の降伏の意思を確認することになった最初の米国人といって良いでしょう。またNSAの伝説的解読官、アン・カラクリスティも元々、戦争中に陸軍の暗号解読組織で雇われ、才能を開花させたようです。
このように戦争中の米陸海軍の暗号解読組織では多くの女性解読官が活躍していたので、暗号分野で日本軍は、女性の力に屈服させられたといっても良いのかもしれません。本書はこのような事実を丹念に発掘しており、歴史研究としても読み物としても興味深い内容となっています。同時期の英国の暗号解読組織(GC&CS)でも2000名もの女性スタッフを雇っていたことが知られていますが、まだ男尊女卑の強かった時代に女性の能力を活用した米英の柔軟さには驚くばかりです。これに対して日独は女性をこのような部署に配属するという発想は皆無でしたし、ソ連に至っては女性を兵士として最前線に送り込んでいます。まぁ日本も大学出の貴重な頭脳を学徒動員によって最前線に送り込んでいましたのであまり笑えませんが、いずれにしましても使えるものは何でも使おう、というアングロサクソンの現実主義的な発想には頭が下がる思いです。
なお、本書は今年の夏頃にみすず書房さんから翻訳版が出版される予定となっております。


