Top Secret: From Ciphers to Cyber Security
2019年 09月 09日
今年はイギリスの政府通信本部(GCHQ)が設置されて100年になります。ちょうど10年前にこのブログでもMI6とMI5が100周年でオフィシャルヒストリーを出すことを書いたのが昨日のことのように思い出されますが、その時はまさかGCHQまでもがオフィシャルヒストリーを出すとは思いもよりませんでした。ケンブリッジのC.Andrew教授もGCHQは一番秘密の多い組織だ、とよく仰っていたので、私自身もその言葉を鵜呑みにしていましたが、良い意味で想定を裏切ってくれました。
恐らくはそれと連動したイベントだとは思うのですが、ロンドンのScience Museumで"Top Secret: From Ciphers to Cyber Security"と題した展示イベントをやっていましたので、早速見に行ってきました。ただ事前予約かつ住所等を登録しないと入れないという設定で、色々といらぬ妄想が膨らみます。イベントはGCHQの名を借りていますが、どちらかといえばその前身である政府暗号学校(GC&CS)の歴史展示が多かった印象です。GC&CSといえば、私自身も資料公開直後の20年前からつい先日まで、嫌になるほど暗号解読資料と格闘してきたのですが、まだGCHQが秘蔵している資料がかなりあるらしく、それらの資料が本邦初公開となっていました。
興味深かったのは、GC&CSの本部のあるBletchley Parkから80km離れたロンドンまで毎日、400台のバイク(BSA M20)を往復させ、暗号解読文を送り届けていた事です。なぜバイクかといえば、それは単に「速いから」でありまして、バイク乗りの私としても我が意を得たりといったところでした。各国の暗号は毎日、解読されると所定の封筒に収められ、それをバイクに託して、1時間少々で首相官邸や関係各省に解読文が送られるわけでして、こういった実際の運用を想像しながら暗号解読文を読むと、これも苦労して届けられたのかな、といった妄想も膨らみますし、暗号解読文がかなり薄い紙にプリントされている理由も何となく想像できます。恐らくは軽さ重視なのでしょう。
最近、ちょうど『日英インテリジェンス戦史』という本を上梓したところだったのですが、このバイクや封筒の写真を著作に使っていれば、歴史の臨場感のようなものを表現できたようにも思うわけです。
GCHQについても冷戦期から最近まで、それなりの展示がありました。私はスパイになったような気分で、展示物を徹底的に写真に収め、流されている動画を何度も見直しました。忘れないうちに記しておきますが、GCHQが解読している世界中の言語の数は現在、42か国分だそうです。
by chatnoir009
| 2019-09-09 03:12
| インテリジェンス