衆議院情報監視審査会
2018年 05月 26日
そして公務員の立場から見れば、何でも国会の委員会に出すべきだ、となると役所は抵抗するので、まずは行政によるチェック機能を強化していくことが必要だと発言しました。行政による監視権限を強化した後、時間をかけて、立法府の監視権限も強化していく、というのがあるべき道筋のように思われます。もちろんその過程で、審査委員から特定秘密が漏れた場合の罰則規定も設けておく必要性を感じております。
歴史家の立場としては、1年未満の特定秘密文書が数多く廃棄されている事実を知りまして愕然とした次第です。防衛省・自衛隊の日報についても保存期間が1年未満であったことは記憶に新しいのですが、日報は戦前でいえば日本陸海軍が作成しておりました日誌や戦闘詳報に近いものです。旧軍は戦闘詳報を軍事機密に指定し、厳格に管理してきました。その理由は詳報がなければ戦訓を学んだり、後の教育に活かすことができないからです。また戦後、多くの歴史研究者が戦闘詳報を検討することによって、日本軍の作戦行動を歴史的に評価することができました。歴史家の心情としましてはなるべくたくさんの文書を残しておいていただきたい、どのような文書であれ廃棄など論外である、という心情ではあります。ところが実際には多くの文書が廃棄されているため、歴史研究者はオーラルヒストリーという形でかつての当事者の方々に聞き取りを行い、資料として記録に残さなければならなくなっているわけであります。
今後の具体的な処方箋としては、アーキビストによる廃棄や公開に関する助言制度のようなものを導入するのが良いように思います。現在、有識者からなる情報保全諮問会議が設置されていますが、こちらは制度の運用や法的な側面が重視されているようですので、この制度とは別に特定秘密に歴史資料としての価値があるかどうかを精査する組織があっても良いかと考えます。米英では大学の歴史研究者が公的史家(オフィシャルヒストリアン)という形で、情報機関の秘密情報を閲覧し、公開すべきかどうか意見を述べる制度が存在しています。
本来であれば、保存期間の終了した特定秘密については、速やかに他の行政文書同様に国立公文書館へ移管し、そこでアーキビストの審査を受けて公開すべきかどうか決定するのが筋ですが、現状、国立公文書館の職員数、並びにアーキビストについては不足しており、さらに移管されることなく廃棄される文書も膨大な数となっていますので、当面は内閣府において廃棄される文書が歴史資料に該当しないか審査する委員会のような形になるかと考えられます。