古くて新しい勢力均衡
2014年 03月 13日
ウクライナ情勢はまだ現在進行中ですが、幾つか教訓は汲み取れそうです。まずはやはり集団安全保障体制の限界でしょうか。これは既に1930年代に満州事変やエチオピア侵攻で明らかになっていたことですが、自国と全く関係のない所で生じた武力侵攻事案に、自国の軍隊を送り込んでドンパチやるべきなのか、といった命題です。集団安全保障の理念から言えば、各国が協力して派兵するべきなのでしょうが、当時の国際連盟の反応は外交的な非難か、せいぜい経済制裁までで、とても派兵してまで国際関係を安定させるところには向かいませんでした。
ウクライナ情勢に対する欧米の対応も、ロシアとの衝突を覚悟してまでウクライナに介入する義理はない、といったところでしょう。1991年にイラクがクウェートに侵攻した時の国際社会の対応は見る影もなくなってしまいました。また今回、国連がほとんど機能しないということも明らかになってきました。ロシアの実行力に対して国連が介入できるわけでもなく、現地入りした国連のセリー特使は「状況把握」すらできずに追い返されてしまいました。
21世紀の国際秩序はしばらくの間、経済ではG20があり、政治的には国連、軍事的には米軍による圧倒的なプレゼンスで何とか成り立っていたのですが、米軍の力は相対的に低下し、今回の一件で国連もほとんど機能してないということが明らかになりましたので、イアン・ブレマー氏の言うところの「Gゼロ」状態となってしまったわけです。しかしその実態は恐らく旧来の勢力均衡が幅を利かせる世界なのでしょう。実際、ウクライナで起こっているのは、財政破綻しそうなウクライナとそこに付け入るロシアと米欧の勢力圏争いに過ぎません。
グローバル経済の時代にあって、また旧時代の勢力均衡かよ、という突っ込みも聞こえてきそうですが、なんだかんだ言っても、国際政治の歴史は勢力均衡の時代と覇権国(蘭英米)の時代がほとんどを占めてきたわけです。そもそも経済活動というのも安全保障が確立され、安定した活動ができる世界を前提に成り立つものです(マルクス史観では経済が下部構造と規定されますが)。
2011年4月、ギラード豪首相が訪日した際、当時のオーストラリアは中国との経済的な結びつきが強いにも関わらず、中国を意識した日本との戦略的連携を表明し、日本側を驚かせました。オーストラリアはインドネシアやシンガポールとも対中同盟を結んでいます。つまりこれらの国々は、中国の台頭で不安定化しつつあるアジアの国際秩序を何とか勢力均衡策によって安定させようとしているのです。
流動化しつつある国際社会と国連の機能不全は、今後の日本の外交や安全保障政策にも試練を与えるでしょうが、これは国際秩序を見直す機会でもあります。そもそも国連は第二次大戦終結時の世界情勢を反映して設置された組織であり、勝った側にいた中国などはこの体制の下で利益を享受し、国力の増進に努めることができたわけであります。しかし世界は協調的な枠組みから勢力均衡の時代に移りつつあると見られます。ブレマー氏は、今後世界が米中対立か米中による「G2」の世界になると予想されているようですが、個人的にはアジアにおいて従来の「日米韓>中国」の時代から、中国(+朝鮮半島)とその他アジア諸国+オセアニア+アメリカとの間で、バランス調整の時代に突入するのではないかと考えます。
この構図に立てば、ロシアの役割が大変重要になってくるでしょう。ロシアがどちらに付くかでバランスは大きく変わることになります。これはちょうど1941年の米英vs日独伊のどちらにソ連が付くかで戦争の趨勢が大きく変わるといった状況に似ています。
日本人は世界を見るとき、日米、日中、日韓と二国間関係から規定しがちですし、報道機関の「各国政府は…」という枕詞もいつも米中韓のみを指している気がしますので、もう少し広い観点から世界を見る習慣を持った方が良いように思います。
ウクライナ情勢に対する欧米の対応も、ロシアとの衝突を覚悟してまでウクライナに介入する義理はない、といったところでしょう。1991年にイラクがクウェートに侵攻した時の国際社会の対応は見る影もなくなってしまいました。また今回、国連がほとんど機能しないということも明らかになってきました。ロシアの実行力に対して国連が介入できるわけでもなく、現地入りした国連のセリー特使は「状況把握」すらできずに追い返されてしまいました。
21世紀の国際秩序はしばらくの間、経済ではG20があり、政治的には国連、軍事的には米軍による圧倒的なプレゼンスで何とか成り立っていたのですが、米軍の力は相対的に低下し、今回の一件で国連もほとんど機能してないということが明らかになりましたので、イアン・ブレマー氏の言うところの「Gゼロ」状態となってしまったわけです。しかしその実態は恐らく旧来の勢力均衡が幅を利かせる世界なのでしょう。実際、ウクライナで起こっているのは、財政破綻しそうなウクライナとそこに付け入るロシアと米欧の勢力圏争いに過ぎません。
グローバル経済の時代にあって、また旧時代の勢力均衡かよ、という突っ込みも聞こえてきそうですが、なんだかんだ言っても、国際政治の歴史は勢力均衡の時代と覇権国(蘭英米)の時代がほとんどを占めてきたわけです。そもそも経済活動というのも安全保障が確立され、安定した活動ができる世界を前提に成り立つものです(マルクス史観では経済が下部構造と規定されますが)。
2011年4月、ギラード豪首相が訪日した際、当時のオーストラリアは中国との経済的な結びつきが強いにも関わらず、中国を意識した日本との戦略的連携を表明し、日本側を驚かせました。オーストラリアはインドネシアやシンガポールとも対中同盟を結んでいます。つまりこれらの国々は、中国の台頭で不安定化しつつあるアジアの国際秩序を何とか勢力均衡策によって安定させようとしているのです。
流動化しつつある国際社会と国連の機能不全は、今後の日本の外交や安全保障政策にも試練を与えるでしょうが、これは国際秩序を見直す機会でもあります。そもそも国連は第二次大戦終結時の世界情勢を反映して設置された組織であり、勝った側にいた中国などはこの体制の下で利益を享受し、国力の増進に努めることができたわけであります。しかし世界は協調的な枠組みから勢力均衡の時代に移りつつあると見られます。ブレマー氏は、今後世界が米中対立か米中による「G2」の世界になると予想されているようですが、個人的にはアジアにおいて従来の「日米韓>中国」の時代から、中国(+朝鮮半島)とその他アジア諸国+オセアニア+アメリカとの間で、バランス調整の時代に突入するのではないかと考えます。
この構図に立てば、ロシアの役割が大変重要になってくるでしょう。ロシアがどちらに付くかでバランスは大きく変わることになります。これはちょうど1941年の米英vs日独伊のどちらにソ連が付くかで戦争の趨勢が大きく変わるといった状況に似ています。
日本人は世界を見るとき、日米、日中、日韓と二国間関係から規定しがちですし、報道機関の「各国政府は…」という枕詞もいつも米中韓のみを指している気がしますので、もう少し広い観点から世界を見る習慣を持った方が良いように思います。
by chatnoir009
| 2014-03-13 22:22
| 国際情勢