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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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閉塞作戦の狙いは。。。

 報道によりますと、ロシア海軍がクリミア半島のウクライナ海軍基地のあるDonuzlav湖と黒海の間に古くなった軍艦を沈め、ウクライナ艦艇の航行を妨害する閉塞作戦に出たようです。閉塞作戦というと日露戦争時の旅順港閉塞作戦を彷彿とさせ、胸が熱くなるのですが、現実問題として閉塞作戦は古今東西ほとんど上手くいった試しがなかったと記憶しています。船で塞ぐことができるのはごく浅く狭い海域のみですから、これは当然の帰結です。一応、Google Earth でDonuzlav湖を確認してみますと、砂州の間に何とか船の通れそうな海域があり、どうやらここに船を座礁させたようです(こういう時はリアルタイムの衛星写真があればとても便利だと思いますが。。。)
閉塞作戦の狙いは。。。_e0173454_2231486.jpg

 これぐらいの幅なら何とか封鎖できそうですが、問題はどの程度の規模の艦隊を陸封できたかどうかです。湖の上流にあるNovoozerne海軍基地の陣容をこれまたGoogle Earthで見てみますと、フリゲート艦らしきものが1隻、パトロール艦らしきものが3隻確認できます(2013年7月撮影。ちなみに舳先が丸いのは輸送艦かと)。 

閉塞作戦の狙いは。。。_e0173454_226217.jpg ただこの程度の戦力ですと、ロシア海軍から見ればそれ程の脅威ではありません。そもそも今回の閉塞作戦は何とも中途半端に思えます。本気でやるなら機雷による封鎖がベストでしょうが、現状でロシア海軍はそこまでやる気がないのでしょう。色々な報道を見ていますと、先週、ロシア海軍が同基地のウクライナ海軍部隊に対して恭順するよう求め、ウクライナ側はそれを突っぱねたそうですので、どうやら今回の措置は嫌がらせ、というか威圧行動かと思います。
 
 21世紀にもなって、クリミア半島という地政学上の要衝をめぐって閉塞作戦が行われるとはあまりに時代錯誤的な印象ではありますが、ロシア側の本気度は十分伝わってきます。現在、欧米で対露制裁が検討されていますが、エネルギーをロシアに頼る欧州は及び腰ですし、アメリカも大した策を打ち出せないでいます。ロシアから見ればクリミア問題は経済問題なんかより遥かに大事な主権問題であり、安全保障上の問題でありますので、これに対して経済性制裁で何とかしようという欧米のセンスはややどうかと。経済の専門家は口を揃えてマーケットはロシアを見放した、との意見のようですが、ロシアにとってはそんなものは二の次だということでしょう。
 冷戦の終結から四半世紀の間、我々は圧倒的なアメリカの軍事力を背景にした国際秩序に安穏としてきたわけですが、どうやらこれからはまた地政学と向き合わなければならないようです。

追記:既に報道されていましたが、陸封された艦は7隻、ウクライナ海軍部隊の三分の一にあたるそうです。
by chatnoir009 | 2014-03-10 22:13 | 国際情勢