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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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陸上幕僚監部運用支援・情報部別班

 巷で騒がれている、陸自の情報組織、陸上幕僚監部運用支援・情報部別班ですが、最初に断っておきますと、私はこの組織の存在や活動については初めて聞きました。有名なシギント機関、調査2部別室のヒュミント版ということになるのでしょうか。しかし概要は推測することができます。
 報道では日本版CIAとか陸自のスパイ組織とか書かれていますが、まず自衛官が海外で身分を偽装して活動できるのか、という点を考えないといけません。経験上、身分の偽装は不可能です。なぜなら日本国民である以上、公務、私用に関わらず、出国する際には必ずパスポートが必要であり、外務省は偽名や身分を偽ったパスポートの発行は一切認めていません。恐らく情報収集目的となると公務パスポートか外交官パスポートになるのですが、両者とも身分と本名がばっちり記載されますので、赴任先で身分を偽って行動することは極めて難しいと思います。
 それでも国の機関であれば外務省は偽装パスポートを発行しているのでは、とも邪推できますが、外務省からすれば自衛隊が海外でヒュミント活動を行うのは外交一元化の面からも好ましくありませんので、むしろ止めて欲しいぐらいでしょう。ですので恐らく海外に派遣された自衛官は、赴任国の日本大使館に所属せず、大学や研究機関に所属、もしくはフリーの身分で調査活動をしていたのだと推測できます。でもこれって、よく公務員が海外留学や海外の研究機関に所属しているのとあまり変わりません。私自身も英国のシンクタンクに所属していましたので何となくわかりますが、この身分だと秘密情報活動はまず不可能です。できるのは色々な国の大使館のパーティーや国際会議に出かけ、そこで意見交換するぐらいでしょうか。まぁこのような情報収集もバカにはならないのですが。
 予算については、これは多分、陸幕の調査費用名目あたりで拠出されていたのだと推察できます。恐らく最大の問題は、歴代の防衛庁長官・防衛大臣がこの事実を知らなかったのか、という点だと思いますが、これは極めてデリケートな問題です。「知らなかった」では監督不行届になりますし、「知っていた」でも政治的な問題になりますが、「知らなかった」であればなぜ陸幕がそれをきちんと報告しなかったのか、という話になります。ただ個人的には恐らく知っていたけれどもそれを言ってしまうと政治問題に発展する可能性があるので、とりあえずは「知らなかった」ということにしているのではないかと推測します。
 つまり「知らなかった」は文民統制の問題に発展し、「知っていた」は大臣の政治責任に発展します。あとはどちらがより深刻な問題になるかを見極めることが必要になってくるでしょう。

 この件に関してはジャーナリストの黒井文太郎さんも書かれていますので、興味のある方はコチラをどうぞ。
by chatnoir009 | 2013-11-30 15:23 | インテリジェンス