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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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通信傍受

 米国家安全保障局(NSA)による盗聴問題が世界中を賑わせていますが、「各国の傍受基地に日本がリストアップされていなかった」、と安心するのはまだまだのようです。アメリカの同盟国であるドイツが傍受されていたのですから、日本は言わずもがな、といったところでしょうか。そもそも「エシュロン」の傍受基地が三沢基地にありますし、広大な在日米軍基地の中に傍受施設があってもそんなものは絶対に表に出てこない話でしょう。
 今年の6月に元米国家情報長官(DNI)のデニス・ブレア提督が、「我々は同盟国の通信は盗聴していない」と豪語されていましたが、この「同盟国」とは「エシュロン」を形成している米英豪加ニュージーランドの5か国のことを指しております。つまりそれ以外はインテリジェンス上の同盟国とは見てくれていないのが実情です。ですので、かつて米国から「最重要の二国間関係」と持ち上げられた日本も、通信傍受のターゲットとなっているのは想像に難くありません。
 このような話をすると多くの方が「けしからん!」とおっしゃるのですが、感情的に対応してもあまり解決には向かいません。もちろん今回の様に各国が一斉に「けしからん!」と世論に訴えかければ、米国の威信は右肩下がり、何らかの対応に迫られるでしょうし、「エシュロン」の活動はやり難くなるとは思いますが、ほとぼりが冷めた頃にはさらに巧妙な仕組みが導入され、各国の情報は引き続き漏れ続けることになるでしょう。正直、技術的に「エシュロン」の通信傍受を防御できるのかどうか何とも言えませんが、個人的にはむしろエシュロン側と裏で手を結ぶのが一番現実的な対応策ではないかと思います。
 この件に関しては以前、米英の何人かの関係者に聞いてみたのですが、日本が「エシュロン」の一端を担う事にはそれ程抵抗感のない様子でした。むしろ向こうからは「本当に日本はやる気があるのか」、「秘密は漏洩しないんだろうか」という具体的な懸念材料が挙げられていました。もちろん日本が「エシュロン」のようなグレーゾーンの情報収集活動に加担することは道義的に問題がありますし、間違っても日本国内で日本人を対象にやるようなことになっては困りますが、国際政治の現実を考えますと、きれい事を言っても始まらないのもまた現実です。さらには「エシュロン」から得られる情報が飛躍的に増大することも確実でしょうから、そろそろ可能性として検討しても良いのではないかと思います。先方が気にしていた機密漏洩に関しても特定秘密保護法案が導入されれば、秘密保全のインフラは整いますし、個人的には国連の常任理事国入りを目指するよりはずっと現実的な選択肢のようにも写ります。

追記(11/2):やはり日本も通信傍受の対象であったことが明らかになりましたが、ドイツとブラジル政府がNSAの通信傍受が人権侵害にあたるとして国連に提訴したようです。今回の件をきっかけに、ルールのないインテリジェンスの世界にルールが作られるのは好ましいことなのですが、問題はルールを守る国と守らない国が出てくるということでしょうか。いかに通信傍受が人権侵害にあたるの判っていても、ロシアや中国といった国々がそれに従って通信傍受をやめるようになるとは思えませんし、そうなると米国としても止めるわけにはいかないでしょう。難しいのは日本の対応です。日本に対する米国の通信傍受活動は許容できませんので、国際的なルール作りに積極的に関与しないといけないのですが、ただロシアや中国の通信傍受を放置したままというのもどうかとも思います。
by chatnoir009 | 2013-10-30 22:20 | インテリジェンス