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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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NSC

 読売新聞に日本版NSC(国家安全保障会議)の概要が報じられていましたが、やや違和感のある印象です。読売新聞だけではなく、ジャーナリストやアカデミアの方と話していて感じるのは、NSCが戦略や危機管理、情報分析などすべてをカバーするといった、外交・安全保障の万能組織のような捉え方がなされているということです。
 私の理解では、NSCは「平時の戦略決定を行う場所」でしかありません。つまりNSCでは政治リーダー達が、事務局から上がってきた外交・安全保障の案件について、幾つかの選択肢の中から一つを決定するものであり、そこでひたすら議論に終始したり、危機管理を行う場でもないということです。危機管理については既に内閣官房に危機管理監と安危室が設置されていますので、危機管理自体はNSCの仕事ではありません。情報分析についても内閣情報調査室の内閣情報分析官が担っていますので、これもNSCの仕事とは言えません。未だにNSCで情報分析も行うという記事も多いですが、分析はやらないと思います。
 そうなると重要なのは戦略策定を担うNSC事務局とインテリジェンスを担う内調との関係がスムーズに行くかどうかです。理想的なのは、NSCの事務局が内調の情報分析を利用してペーパーを書き、それを閣僚級のNSCで決定してもらうことです。こう見るとNSC自体はそれ程万能の組織というわけではなく、それを活用できるかどうかは政治リーダーの力量にかかっているということでしょうか。
 このプロセスを上手く動かすためには、NSC事務局の運用が重要になってきます。NSC事務局はNSC閣僚級会議のため、「日本の国益のため」という明確な意識を持って仕事をしないといけなくなります。これは当然のように聞こえますが、霞が関ではなかなか難しいことなのです。NSCのペーパーを書くという事は、日本の総合的な戦略のために、外交分野、安全保障分野、経済分野、環境分野、それぞれにまつわる情報など、すべての要素を検討して盛り込むということです。しかし日本の組織にありがちなのは、縦割りのタコツボ的組織運営であり、霞が関においてはそれが省庁対立という形で顕在化しているということです。
 もっと具体的に言いますと、「NSC事務局は〇○省のもの」という意識が根付いてしまうと、それ以外の省庁はNSC事務局に前向きに協力する気が起きなくなりますし、また内調とNSC事務局の間でもやりとりがぎくしゃくしてしまいます。これでは折角NSCを設置しても「仏作って魂入れず」、になってしまいますので、NSC事務局では特定の省庁の色をなるべく薄める必要があるかと思います。もちろんNSCは外交・安全保障を策定する場ですので、外務省と防衛省がリードするのは当然なのですが、トップの事務局長が特定の省庁の指定席になるとか、NSCにおける各省庁からのポストはそれぞれ何人、といったようなことはなるべく避けていかないといけません。
 この間ふと気になって、イギリスの方に、NSCのスタッフに占める各省庁の割合を聞いてみたのですが、回答は「知らない。それが重要なの?」というものでした。彼によるとNSCという所は必要な戦略立案のために、その時々のベストな人材を派遣してもらうという方針なので、特定の官庁から何人、というやり方ではとても回らない、ということでした。流石に我が国ではこれを真似ていくのは難しいかもしれませんが、少なくとも戦略策定のためには「オールジャパン」で当たらないといけない、そのためには省庁の縄張り争いを越えていかなくてはいけない、といった意識を持つことが、NSC運用の秘訣なのではないかと思います。折角「日本版NSC」を設置するのですから、箱ものになってしまうのだけは避けていただきたいです。
 あとやはり特定秘密保護法案の方も、NSCと内調、各省庁間で情報をやり取りする上で重要なインフラですので、こちらも粛々と法制化していく必要があるかと考えます。
by chatnoir009 | 2013-10-30 18:58 | インテリジェンス