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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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情報収集の難しさ

 アルジェリアでの人質事件はまだ解決したわけではありませんが、残念ながら現時点では痛ましい状況になってしまいました。日本では「人命を最優先すべきだった」や「もっと交渉すべきだった」というような論調もありますが、テロとの戦いは彼我の犠牲を厭わず断固としたものでなければ次のテロを招くだけとなってしまいます。
 ただ日本としてこれから具体的にどうすれば良いのか、というのは難しい問題です。本日の『毎日新聞』の社説にアフリカの防衛駐在官を充実させ、情報収集を強化しなければならない、といった意見があり、これは確かに正論なのですが、単純に防駐官を増やしても現在の枠内で活動する限りは難しいと思います。基本的に海外での情報収集活動(ヒュミント)は、パーティーでの会話や学術会議への出席、他国の情報関係者との情報交換などですが、対テロとなるとかなりグレーゾーン、もしくは違法行為に踏み込んでいく必要があります。
 例えばCIAは悪名高い囚人特例引渡しによって、捉えたテロリストを第三国に移送し、そこで拷問や違法な尋問を行って情報を引出しています。欧州の情報機関も一時期、このCIAの尋問に加担していました。ビン・ラーディンの潜伏先を特定できたのもこのような尋問情報が大きかったようです。またモサドであればヒズボラやハマスに浸透し、内部情報を集めるというやり方もあります。ただこのようなヒュミント活動、さらには外国での通信傍受や無人機による情報収集は基本的に違法行為となります。
 これらの事例から対テロ情報収集の場合、国の機関である情報組織があえて法律を犯さないと有効な情報収集ができない、ということが理解できます。他方、このような行為に手を染めてしまうとそれが発覚した場合に大きな問題となりますし、また公務員である情報オフィサーが命の危険に晒されることもあるわけです。ですからアフリカに防駐官を送り込んでも、現状の枠組みでは有効な情報を得ることが難しく、せいぜい欧米の情報機関から情報を分けてもらうぐらいのことしかできないのだと想像します。
 今後政府としては日本の防駐官なり外交官が海外でグレーゾーンの情報収集を行うことを認めるのか、もしくはそれが無理であれば日本の得意な東アジアでの情報収集に特化し、そこで得られた情報と欧米の情報機関が持つテロ情報と交換していくしかないように思います。
by chatnoir009 | 2013-01-22 21:21 | インテリジェンス