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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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クールジャパン?

 『Newsweek』(日本語版)に「息切れクールジャパン」と題した特集が組まれていましたので興味深く読みましたが、ごく大まかに言えば、世界中で日本のコンテンツブームには陰りが見え始めている、そもそも「クールジャパン」とは何だったのか、というような要旨でした。ちょうど先週から始まりました「各省版事業仕分け」でも、クールジャパン戦略推進事業は「抜本的改善」の判定とのことで、これは真っ当至極な結論だと思います。
 政府は経産省に2年前から「クールジャパン室」を設置し、官民挙げて「クールジャパン」の世界への売り込みをやってきたのですが、わざわざ官がやる意味があるのかとずっと疑問に思っていました。「クールジャパン官民有識者会議提言」を一読しても、いわゆる「日本文化論」についてはそれなりに語られていますが、コンテンツ分野はさっぱりのようで、役所にありがちな無味乾燥な作文と化しております。まぁ想像するに、コンテンツ(ここではアニメに絞ります)に理解のない文化人や官僚がいくら頭を捻っても時間の無駄だということはわかりますが、個人的には売り込み云々よりもまずは足元のアニメの制作現場をなんとかすべきだと思いますし、それこそ官の得意とする分野なのではないでしょうか。
 この件に関しては過去に経産省も色々と調査をしていたようで、9年前にはテレビアニメーションの番組制作の現状が以下のように公表されています。

クールジャパン?_e0173454_22355931.jpg
 

 上の図はよく言われますように、5000万円の製作費が広告代理店の中抜きやテレビ局の電波料によって最終的に制作会社には800万円しか残らないという話です(これについては岡田斗司夫氏がよく自虐的に書かれていますが)。90年代以降はリスク回避とより自由な発想を活かせるということで製作委員会方式が導入されることとなりました(かの「エヴァ」もこの方式で作られています)。この方式ですとテレビ局からではなく、各スポンサーが金を捻出し合う製作委員会から製作費が制作会社に渡るわけです。以下は公取委が作成した資料です。

クールジャパン?_e0173454_223733.jpg


 しかし結局これも広告代理店やキー局の優位は揺らがないようです。そのため製作方式に関わらず、現場のアニメーターは年収100万円程度で重労働を強いられることになってしまうことになります(アニメーターというのは極めて高度な技術を有する技能者であるにも関わらず!)。
 現状ではアニメ制作会社はDVDなどの売り上げに期待するしかなく、無難なラノベのアニメ化や人気シリーズもの、もしくはマニアを狙い撃ちにした萌えや暴力的な内容の作品を安易に世に送り出し、数撃てばそのうち当たる、という思考に陥っているようです。このままではコンテンツ産業は先細りですし、日本のゲーム業界がそうなりましたように、近い将来、日本のアニメは競争力を失っていくことになるのでしょう(個人的な話で恐縮ですが、今期も色々なアニメが放映されているにもかかわらず、何度も原作を読み、OVAも観たのに「HUNTER×HUNTER」が一番面白く感じてしまうというのは悲しい限りです)。
 これはアニメに限らず、テレビという媒体を通すのであればドラマやバラエティにも見られますように、広告代理店とキー局を中心にした番組製作の構造的な問題であります。恐らく官がすべきことは民でもできるコンテンツの売り込みよりも(アニメはネットに乗って無料で世界中に拡散していきます)、製作会社を中心とした構造への転換を図るべきなのでしょう。ただ電波利権は相当な既得権益と化していますので、役所だけではどうしようもないのかもしれませんが、少なくとも日本のクリエイティヴィティをどう活かせば良いのか、という問題を正面から検討していただければと思います(子供向けはともかく、そもそも深夜枠のアニメがテレビ向けのコンテンツなのかという根本的な問題がありますが)。
 日本にはまだ良いコンテンツを作り出す実力は十分あり、収益も得られています。通常、5000枚売れば合格と言われるアニメのDVDですが、「まどマギ」のDVDは1~6巻累計で既に40万枚以上が売れたそうです。
by chatnoir009 | 2012-06-12 22:38 | サブカルチャー