人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

Falklands 30 years on

 ケント大学で開催されていますフォークランド紛争30周年の学会に参加してきました。日本では石原都知事が尖閣諸島の購入を表明されて話題となっていますが、国際的にも離島をどのように守るのかは難しい問題であります。本会議ではイギリス、アルゼンチンからの学者に加え、軍人、インテリジェンス・オフィサー、ジャーナリスト、島民、そして紛争時の国防大臣、サー・ジョン・ノットまで参加されて3日間の活発な議論が行なわれました。
 様々な意見を拝聴していて感じたのは、イギリス側が国際法に従って合理的に交渉しようとしても、アルゼンチンが非合理的な行動に走ると全く交渉にならないということであります。また事前に侵攻の情報があったとしてもそれが活かされなければ宝の持ち腐れとなります。真偽は定かではありませんが、元6の方はアルゼンチンから貴重な情報を送り続けたのに、外務省内のアルゼンチン宥和派に握りつぶされたと仰っていました。GCHQの通信情報については未だによくわかりません。いずれにせよ情報はホワイトホールでストップし、政治家まで届いていなかった印象です。
 アルゼンチンが侵攻してきてからノット国防大臣は初めてフォークランド諸島の位置を確認したそうですし、またしばらくの間も戦争はないだろうとの観測だったそうです。このように政治家のレベルではかなり楽観的な議論が行なわれていたのですが、これに危機感を抱いた海軍のヘンリー・リーチ提督は制服姿のまま、警備員が止めるのを振り切って議会に突入し、その場でサッチャー首相とノット大臣を説得したという有名なエピソードがあります。日本ではちょっと考えられませんが、このような現場からの強力なプッシュのお陰でサッチャー首相は迅速な機動部隊の派遣を決断できたといいます。この機動部隊の派遣決定はもちろん軍事的に大いに意味があったのですが、当時アルゼンチンに占領されたフォークランド島民もこのニュースで大変勇気付けられたとのことでした。恐らく機動部隊の投入が遅れていれば戦争は南半球の厳しい冬に突入していましたので、かなりの長期化が予想されていたようです。
 またアルゼンチンの方が話しておられたのは、アルゼンチンにとってマルビナス(フォークランド)問題は歴史や法律の問題ではなく、国家のアイデンティティ、すなわち感情的な問題なので理屈は不要だとのことでした。イギリスから見ればイギリスは国際社会で自らの正当性を訴え、戦争にも勝ち、フォークランドがイギリス領土であることを完全に証明できたのですが、アルゼンチン側では敗戦によってむしろ国民のナショナリズムが大いに刺激され、現在ではマルビナス返還運動が大いに盛り上がっているということでした。すなわちイギリスでは比較的冷静に問題が捉えられているのに対して、アルゼンチンでは感情的な盛り上がりを見せており、現在のフェルナンデス大統領もそれを煽っているという形になります。アルゼンチン側から見れば諸島近海の海底油田の問題はあくまでも口実に過ぎないわけですね。
 結論としましては、一度取られた島を奪回するのはかなり難しいので、取られないようにするということが最善の策であります。現在、イギリスは諸島の守りを固めるのに余念がありません。それ以外にも①自国の領土に対する認識や情報などといった感度を高めておく、②領土問題は国民感情の問題でもあるので理屈だけではなかなか解決しない、といったことを認識しておかなくてはなりません。
Falklands 30 years on_e0173454_1723488.jpg

by chatnoir009 | 2012-04-29 17:24 | 国際情勢