再燃フォークランド
2012年 02月 17日
今年はフォークランド紛争が勃発してちょうど30年目にあたりますので、イギリスでは紛争にまつわる研究大会や資料公開などが予定されていますが、その一方でフォークランドの領有権問題がイギリス・アルゼンチン間で再燃しつつあります。
その理由は色々なところで報じられていますように、イギリスの民間会社がフォークランド近海の海底油田の試掘を始めようとしてアルゼンチンがそれに猛反発していることや、英王室のウィリアム王子が最新鋭の防空駆逐艦「HMSドーントレス」とともに同地に赴任してきたことが原因となっています。これに対してアルゼンチン政府はフォークランドの旗を掲げる船舶の寄港を禁止する措置をとり、南米諸国もこれに同調しています。すなわちフォークランドで石油を掘ってもタンカーで南米諸国に輸出することができなくなってしまうわけです。これに対してイギリスは原子力潜水艦を同海域に派遣したとも報じられ、両国間の緊張感が高まっているようですが、結論から言ってしまえば戦争の可能性は限りなく低いと思います。その理由は単純に双方とも戦争をするだけの軍備が整備されていないからです。
1982年のフォークランド紛争は「制空権と制海権の確保」という基本原則を確認することになったのですが、当時のイギリスの航空作戦を支え続けたインヴィンシブル級航空母艦とシーハリアー戦闘機は退役、今はフォークランドに最新鋭のタイフーン戦闘機、4機一編隊が配備されているだけです。4機といっても実際の戦闘にすべて投入でききるわけではなく、せいぜい2機程度でしょうから、空戦をやるには心もとないわけです。恐らくそこを補完するために半径250kmもの索敵能力を誇るドーントレスを派遣し、対空防御を固めたといえます(守るだけなら空母は不要です)。
これに対してアルゼンチン軍の陣容はさらにお寒く、まともな戦闘機は1960年代に実戦配備されたミラージュIIIが12機あるだけです(さらに古いスカイホークもありますがこちらは攻撃機ですので)。もし仮にこの戦力を全機投入できたとしてもタイフーンのAMRAAMミサイルかドーントレスのアスターミサイルの餌食になるだけでしょうから、間違ってもアルゼンチン空軍は空戦など挑めません。制空権が取れなければ制海権もとれませんので、諸島に近づくこともできなくなります。さらにアルゼンチン軍は以前持っていた揚陸艦も退役させましたので、そもそも兵員をフォークランド諸島に上陸させることができないわけです。つまり双方ともとても戦争ができるような陣容ではありません。万が一戦闘となれば現時点では守りを固めているイギリス側が圧倒的に有利ですが、1982年の時の様に一度アルゼンチンに占領されれば空母がないのと今回はチリが協力してくれないので、奪回はかなり難しくなると思います。
それと今回、イギリスは外交以上戦争未満の策として、抑止の意味で原潜を派遣したわけであります。1977年にイギリス・アルゼンチン間の緊張が高まった際、当時の英キャラハン内閣は原潜とフリゲート艦隊をフォークランド近海に派遣し、アルゼンチンの行動を抑止しました。しかしその後のサッチャー政権はこの教訓を生かし切れず、事態を楽観視した結果、アルゼンチン軍のフォークランド侵攻を招いてしまったといえます。よって原潜の派遣による抑止策は、外交以上にイギリスのフォークランドに対する心構えを示すことができますので、今回もあえてそれをやったのでしょう。このようなやり方は他国との領土問題を抱える我が国にとっても学ぶべきところが多いと思います。
ただよくわからないのはアルゼンチンのフェルナンデス大統領のやや強硬な姿勢です。1950年代のペロン政権からその後の軍事政権の場合は国内経済の悪化と政治の腐敗のため、国民の目を外に向けるという意味でフォークランド問題が取り上げられましたし、80年代のガルチェリ政権の場合、ガルチェリ大統領の任期が迫っていましたから、それまでにフォークランドを奪回して権力を維持しようとしたことは理解できます。しかし現政権は国民の支持率も高く、経済情勢も安定していますので、あえてフォークランド問題を再燃させる理由があまり見当たらない気がします。これまでアルゼンチンは声高に国際社会や国連に訴えることも散々やってきましたが、老練なイギリス外交はこれを封じ込め続けてきました。もちろん領土問題は常に自国の領有権と正当性を訴え続ける必要はありますが、今のアルゼンチンには外交を担保する腕力が欠けているようです。


その理由は色々なところで報じられていますように、イギリスの民間会社がフォークランド近海の海底油田の試掘を始めようとしてアルゼンチンがそれに猛反発していることや、英王室のウィリアム王子が最新鋭の防空駆逐艦「HMSドーントレス」とともに同地に赴任してきたことが原因となっています。これに対してアルゼンチン政府はフォークランドの旗を掲げる船舶の寄港を禁止する措置をとり、南米諸国もこれに同調しています。すなわちフォークランドで石油を掘ってもタンカーで南米諸国に輸出することができなくなってしまうわけです。これに対してイギリスは原子力潜水艦を同海域に派遣したとも報じられ、両国間の緊張感が高まっているようですが、結論から言ってしまえば戦争の可能性は限りなく低いと思います。その理由は単純に双方とも戦争をするだけの軍備が整備されていないからです。
1982年のフォークランド紛争は「制空権と制海権の確保」という基本原則を確認することになったのですが、当時のイギリスの航空作戦を支え続けたインヴィンシブル級航空母艦とシーハリアー戦闘機は退役、今はフォークランドに最新鋭のタイフーン戦闘機、4機一編隊が配備されているだけです。4機といっても実際の戦闘にすべて投入でききるわけではなく、せいぜい2機程度でしょうから、空戦をやるには心もとないわけです。恐らくそこを補完するために半径250kmもの索敵能力を誇るドーントレスを派遣し、対空防御を固めたといえます(守るだけなら空母は不要です)。これに対してアルゼンチン軍の陣容はさらにお寒く、まともな戦闘機は1960年代に実戦配備されたミラージュIIIが12機あるだけです(さらに古いスカイホークもありますがこちらは攻撃機ですので)。もし仮にこの戦力を全機投入できたとしてもタイフーンのAMRAAMミサイルかドーントレスのアスターミサイルの餌食になるだけでしょうから、間違ってもアルゼンチン空軍は空戦など挑めません。制空権が取れなければ制海権もとれませんので、諸島に近づくこともできなくなります。さらにアルゼンチン軍は以前持っていた揚陸艦も退役させましたので、そもそも兵員をフォークランド諸島に上陸させることができないわけです。つまり双方ともとても戦争ができるような陣容ではありません。万が一戦闘となれば現時点では守りを固めているイギリス側が圧倒的に有利ですが、1982年の時の様に一度アルゼンチンに占領されれば空母がないのと今回はチリが協力してくれないので、奪回はかなり難しくなると思います。

それと今回、イギリスは外交以上戦争未満の策として、抑止の意味で原潜を派遣したわけであります。1977年にイギリス・アルゼンチン間の緊張が高まった際、当時の英キャラハン内閣は原潜とフリゲート艦隊をフォークランド近海に派遣し、アルゼンチンの行動を抑止しました。しかしその後のサッチャー政権はこの教訓を生かし切れず、事態を楽観視した結果、アルゼンチン軍のフォークランド侵攻を招いてしまったといえます。よって原潜の派遣による抑止策は、外交以上にイギリスのフォークランドに対する心構えを示すことができますので、今回もあえてそれをやったのでしょう。このようなやり方は他国との領土問題を抱える我が国にとっても学ぶべきところが多いと思います。
ただよくわからないのはアルゼンチンのフェルナンデス大統領のやや強硬な姿勢です。1950年代のペロン政権からその後の軍事政権の場合は国内経済の悪化と政治の腐敗のため、国民の目を外に向けるという意味でフォークランド問題が取り上げられましたし、80年代のガルチェリ政権の場合、ガルチェリ大統領の任期が迫っていましたから、それまでにフォークランドを奪回して権力を維持しようとしたことは理解できます。しかし現政権は国民の支持率も高く、経済情勢も安定していますので、あえてフォークランド問題を再燃させる理由があまり見当たらない気がします。これまでアルゼンチンは声高に国際社会や国連に訴えることも散々やってきましたが、老練なイギリス外交はこれを封じ込め続けてきました。もちろん領土問題は常に自国の領有権と正当性を訴え続ける必要はありますが、今のアルゼンチンには外交を担保する腕力が欠けているようです。
by chatnoir009
| 2012-02-17 23:05
| 国際情勢

