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ホワイトホール61番地 ~ インテリジェンスを学ぶ

「めちょっく」or「キラやば~☆」?

真珠湾その2

 e0173454_22531433.png前回のエントリーで紹介させていただいた本は基本的に情報史関連のものです。日米開戦や真珠湾に関わるものといえば、Ian Toll, Pacific Crucible: War at Sea in the Pacific がアメリカで話題となっているようです。これまでアメリカで出版された真珠湾関連の本の多くが、宣戦布告なき奇襲攻撃を行う日本と不意打ちによって損害を被るアメリカ、という基本構図か、油断して警戒を怠っていたアメリカ、というような描き方をしていたように思いますが、本書ではアメリカの対日石油禁輸によって追い込まれていく日本側の窮状や、一か八かの作戦に打って出る山本五十六連合艦隊司令長官、といった日本側の描写が生き生きと描かれており、日米間の見方のバランスを取ろうとしていることが窺えます。
 さすがに70年も経てば自虐史観や日本憎し、といった感情的な視点から脱却し、できるだけ公平に日米の事情を描こうとする書が出てくるのも納得できます。これは2006年にクリント・イーストウッド監督が『父親たちの星条旗』、『硫黄島からの手紙』で日米双方の視点から硫黄島の戦いを淡々と表現したことにも端的に表れていますが、日米戦争について言えば今後はこのような歴史観が主流になっていくのではないでしょうか。著者のToll氏は日本に数年滞在していたようですので、日本側の事情を上手く描き出すことができたようです。
 前回のブログでも書きましたように、アメリカでは真珠湾攻撃70周年の節目の年に様々な真珠湾本が出版されているようですが、本来であれば日本側の事情に関しては日本人の研究者が英語で発信することが理想的ではあります。また我が国でアメリカ人を唸らすような研究書が出版されていないというのも何とも心細くはあります。
 ただしコメンテーターとして参加させていただきました先日の日本国際政治学会の部会、「開戦経緯の再検討」ではそれなりに新たな視角からの議論も多々出てきましたので、研究が行き詰まっているというわけではなさそうです。特にその中でも「戦争の結果を知っている我々が今から振り返れば『日本はなぜあんな悲惨な戦争に突入したのか』と言えるが、当時の政府、陸海軍にとって戦争という選択肢は最も合理的で、皆を納得させるにはそれしかなかった」というような議論などは興味深いものでした。最近の出版物ですと、手前味噌になってしまい恐縮なのですが、『歴史読本1月号 日米開戦への道』や中央公論別冊『日本国の失敗の本質』などが日米開戦を詳しく取り扱っています。

追記:ちょうど本日(12/8)の『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙にIan Toll氏が山本五十六に関する批評を寄稿していました。山本の人物像に関してはかなり魅力的であったということですが、軍人としてはその戦略に問題があったと。特に真珠湾とミッドウェイ作戦については軍事戦略の観点から手厳しく批判されています。今日は日本の主な新聞でも真珠湾攻撃についての社説や記事が見られましたが、どれも「なぜあの戦争を始めてしまったのか」という感傷的なトーンのものが多かったようでした。同じ真珠湾でも捉え方がかなり異なるようです。
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by chatnoir009 | 2011-12-05 22:53 | 書評 | Trackback | Comments(0)
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