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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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本_e0173454_223373.jpg 予告していました通り、ついにM. Lowenthal, Intelligence: From Secrets to Policyの翻訳本、『インテリジェンス-機密から政策へ』(慶應義塾出版会)が出版されました。監訳を務められた茂田宏元大使にお会いするたびに、「まだかまだか」とせがんでおりましたので、やっと現物を手にできて感激しております。翻訳版はハードカバーの装丁に412頁という、原著に比べるとかなり重厚な本になりましたが、読み応えはばっちりです。翻訳についても現役の外交官の方々が分担しておられ、正確で読みやすいものとなっております。また従来「中央情報局」と訳されていたCIA等は、現実にそぐわないとして「中央情報庁」という新たな翻訳となりました。私も今後はこちらを利用させていたただこうと思います。
 本書はアメリカの大学等でインテリジェンスを学ぶための基本中の基本とされているテキストです。経済学でいうところのマンキュー『マクロ経済学』ぐらいの位置づけでしょうか。その論点は恐らく、いかにしてインテリジェンスを政策決定に反映させるのか、といったあたりにあるかと思いますが、本書の構成は、①インテリジェンスとは何か、②米国インテリジェンスの発展、③米国インテリジェンス・コミュニティ、④マクロ見地からのインテリジェンス・プロセス、⑤収集と収集方法、⑥分析、⑦カウンター・インテリジェンス、⑧秘密工作、⑨政策決定者の役割、⑩監視と説明責任、⑪インテリジェンスの課題-国民国家、⑫インテリジェンスの課題-国境を越える問題、⑬インテリジェンスをめぐる倫理および道徳上の問題、⑭インテリジェンス改革、⑮諸外国のインテリジェンス機関、となっており、インテリジェンスをめぐる論点が網羅的に扱われています。
 また著者のローエンタールは30年ものインテリジェンスの実務経験を有しているため、エピソードも豊富に紹介されており、本書が入門用テキストとして広く受け入れられていることがよくわかります。あえて重箱の隅をつつくようなケチをつけるなら、内容があまりにきれいに纏まり過ぎており、実際のインテリジェンスはもっと秘密主義的で混沌としているのではないか、と言ってみたくもなりますが、それ程このテキストはよくできています。私自身はイギリス留学時代に名著、Michael Herman, Intelligence Power in Peace and Warを最初に読まされたんだのですが、これは初学者にはやや難解で泣きそうになったことがあります。やはり最初はLowenthal から入るべきですね。
 以前であれば学生から「インテリジェンスを勉強したいのですが何を読めば良いですか」と聞かれて、英語のテキストしかない状況に苦慮していたのですが、もう迷うことなくこのローエンタール翻訳本や、以前紹介させていただいた小林、北岡本を推薦することができます。私も講義などでこれらをテキストとして利用しようと思います。また実務者の間でも本書は広く読まれることになるでしょう。何と言っても現場では未だに半世紀以上も前に出版されたケ○ト本が使われているところがあるぐらいですから…。本_e0173454_22311515.jpg
 
 また奥田泰広さんが、15世紀から現代までのイギリスのインテリジェンスと国家戦略の関わりを論じた、『国家戦略とインテリジェンス』が出版されました。近代以前のインテリジェンス・ヒストリーについてまとまったものはそうないので重宝しますが、最近出版された、竹田いさみ『世界史をつくった海賊』でもウォルシンガムと国家情報戦略の話が論じられています。最近はちょっとしたウォルシンガム・ブームなのでしょうかね。
by chatnoir009 | 2011-05-25 22:36 | 書評