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ホワイトホール61番地 ~ インテリジェンスを学ぶ

「めちょっく」or「キラやば~☆」?

まどマギ

 今年最大の目玉とも言ってよいアニメ、「魔法少女まどか☆マギカ」ですが、このアニメについて何か感想を書き残しておきたいと思いつつ、どうも感情的にこのアニメに入れ込んでしまったせいか、なかなか何も書けない日々を過ごしてきました。本作に関しては膨大な評論や意見がウェブ上で公開されていますので、それらに目を通せば通すほど、なぜ自分がこの作品に惚れたのかよくわからなくなります。
 これは学術研究、特に歴史研究でよく見かける「対象に入れ込み過ぎて客観的な評価が行えなくなる」というやつでして、「まどマギ」を冷静に観ることができるまである程度時間がかかってしまいました。しかし作品の世界観に「共感」できるというのは作品としては大成功だったわけで、同じ時期に鳴物入りで始まった「フラクタル」が燦々たる評判だったことを考えるとこれを反面教師として考えても良いのかと。
 最近の「ニコ生PLANETS増刊号 徹底評論『魔法少女まどか☆マギカ』」において、「フラクタル」が80年代回帰を目指した作品とした上で、「まどマギ」は新たなステージを探ったゼロ年代アニメの総決算ともいえるという評価でした。確かに「フラクタル」第1話は80年代の「ラピュタ」や「ナディア」を彷彿とさせるような展開でしたが、その後、脱線に脱線を重ねていった印象です。そこでもう少し付け加えるなら、「フラクタル」が80年代回帰を目指して失敗し、「まどマギ」はゼロ年代から先に進むことに成功した稀有な作品だったということができるでしょう。
 「まどマギ」に関してはセカイ系の総決算とか魔法少女の枠組みを破壊したとも言われています。最大公約数的な意見としては、「3話までほのぼのとした魔法少女もの、その後はジェットコースター的なダークな展開。そのギャップが…」といったものになるのかもしれませんが、あの作品は最初から深夜、大きなお兄さんに向けて放映されていましたので、純粋な魔法少女ものというよりは、魔法少女風テイストの戦闘美少女、しかもシナリオがあの虚淵玄氏なので何となく展開は読めた気はします。これに関しては齋藤環『戦闘美少女の精神分析』の方が詳しいですが、いずれにせよ私は特に魔法少女云々というところには惹かれませんでした(OPは魔法少女ものとしては完璧に近い仕上がりで気に入っていますが)。ここであまり尖がった見方を披露しても中二病扱いになるでしょうが、やはり本作品はプロットというか視聴者を引き込む「モノガタリ」作りが凄くうまかったのだと思います。
 「フラクタル」もあんなに叩かれまくるほど酷い出来ではなかったのですが、「まどマギ」という怪物作品と同時期に放映され、お互いオリジナルということで比較されてしまったという点では不幸な作品だったと思います。しかし両者の差は一目瞭然でありまして、「フラクタル」の方は、狙いはなんとなく理解できますが、やはり視聴者置いてけぼりの作りでは、全く共感できません。これは「まどマギ」が脚本やプロット、結末までの道のりを相当練って作られているのに対して、「フラクタル」の方はそこに時間と労力がかけられていないからだと思います。民明書房風に言えば、「氣の練り方が足りない」のでしょう。(自戒を込めて言いますが、学術論文だって一見難しそうだけど、読んでみるとシンプル、読後に明快な理解を得られるものが良いのです。実際は何を主張したいのか混沌としてよくわからないものの方が多いのですが)。
 本作の主要登場人物はたった6人(QB含む)ですが、物語は大変奥深く、また伏線はほったらかしではなく、絶妙のタイミングで回収され、その後また伏線が登場しては回収される、要は何重もの伏線が螺旋を描いた形で話が進んでいきます。しかし複雑そうに見えるこの話は、実は大変シンプルでわかり易い作りとなっており、マニアでなくとも一度観れば十分理解できます。要は作品を通じてシンプルな物語の幹が一本通っており、その周りを複雑な心理描写やセカイ系、百合系の要素、フラットなキャラデザイン等々が取り囲んで独自の世界観を構築しているように見えるのでしょう。
 「まどマギ」に関して語り出すとこの周りの部分に目が行きがちになってしまうのですが、本作はモノガタリの勝利であったと思いますし、マンガやアニメにおけるキャラデザインや作画の美しさは二の次だという個人的な信念を強めました(もちろん作画が崩れていないことに越したことはないのですが)。
 最近のセカイ系をベースにした世界観、キャラ重視の萌え(燃え)量産(Gガン、ジャイアントロボは最高ですが)、安易な漫画やラノベのアニメ化、大風呂敷は広げっぱなしで伏線は回収されず、という「売れそうな」アニメ製造が定着してしまったお蔭で、日本のアニメはもはや世界に誇れるものではない、ツボさえ押さえておけばどの国であっても「似たようなもの」は製造できるのではないかと危惧していたのですが、本作はきちんとしたエンターテイメントベースの物語作りが大事というごく基本的なことを提示してくれたようにも思います。
 オリジナルアニメの制作は商業的には大変な賭けになることは重々承知していますが、ハリウッドにとっても映画を作るというのはものすごい賭けです。名作というのは膨大な作品の死屍累々の上に成り立っているのであって、日本のアニメ制作の現場でもこれぐらいの緊張感がないと、無難な作品ばかりが量産され続け、いずれこの分野でも日本以外の国が台頭してくるようになることになるでしょう。日本のアニメ界の作画、カット、キャラデザイン等は今でも圧倒的なレベルにあるわけですから、今後はモノガタリ充実の方向性が、個人的には希望であります。

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  朝日新聞(5/7夕刊)に掲載された批評はなかなか良いですね~。
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by chatnoir009 | 2011-05-24 22:41 | サブカルチャー | Trackback | Comments(0)
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