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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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わが国の「秘密」

 来月発売されるフランスの外交評論誌に寄稿させていただきました。そもそもの発端は、あちらの編集から海保のビデオ流出やウィキリークスに対して、日本が国としてどのような対応を行ったのか知りたい、との話だったのですが、届いたメールをよく読んでみますと、「日本は機密保持に厳格な国だと聞く。ならばどうしてビデオ流出などが起こったのか」という問題意識のようで、どうやらわが国は過大評価(?)というか戦前の体制と同じように捉えられているようです。そうなりますと私にできることはこの国際的な誤解を解き、わが国の現状をきちんと伝えるべきだろうと思い引き受けたわけであります。しかしそのお隣のイギリスの外交官から昔言われたのは、「日本の機密保持体制はSemi-Secret(なんとなく秘密)にしてるからね、なかなか機微なものは渡せないのよ」ということで、さすがは現場のイギリス人らしくパンチの効いた一言でありました。まぁわかっている人はわかっているんでしょうね。
 とにかく事の原因は、捜査資料を放っておいた海保の脇の甘さにあるわけですが、根本はわが国に秘文書を扱う法律や制度が未整備な状況にあるわけです。さらには何が「秘密」なのかという定義もあるわけではなく、これからはその定義から始めないといけないとなると、膨大な作業量となることが予想されますので、忙しい役所はどこもやりたがらないでしょう。戦前の陸海軍ですら国防保安法における「国家機密」の定義を厳密に行いませんでしたから、これが大変なことは想像できます。となるとまた例のごとく放置ということになりかねません。ここは思い切って政治が守るべき国益というものを提示し、それに該当するものを「秘」の候補として上げるよう各役所に通達するべきなのですが、政治もそれどころではないのでしょうか。結局咽喉もと過ぎれば何とやら、といった状況ですが、次にまた漏洩が起こったとき、その機密が国益に甚大な損害を与えるようなものでないことを祈るばかりです(いや、事前に防ぐべきなのですが…)。
 今回の流出事案については方々で議論を繰り返しました。一つ面白いなと思ったのは、行政学の観点から意見を拝聴したことでした。正直、行政学のことはあまり詳しくないのですが、この分野では80年代から官僚は政治家に仕えるべきなのか、国民に仕えるべきなのか、といった議論があったそうです。例えば2003年のイラク戦争の際、情報機関は政治家に仕えることを優先したわけですが、それが裏目に出てしまったとも解釈できます。そう考えると今回の海保の流出事案は国民に対する要求を満たしたという意味では正しかったのかもしれません。しかしもしわが国に法律で定められた国家機密が存在していたならば、当然それを守ることが最優先事項となります。イギリスでも国家安全保障上の秘密>報道の自由、ということになっているわけですから。
 話は全く変わりますが、今月の『Voice』に「私の座右の漫画三選」という題で書かせていただきました。わずか数千字の短い文章だったのですが、3冊選ぶのに大いに悩んで悩んで悩みまくりました。私の中で『ゴルゴ13』は堅かったのですが、残り2冊を選ぶのに苦労しました。自分が好きだという理由だけであまりマニアックな漫画を選ぶのもどうかなぁ、と。例えば『稲中』や『珍遊記』では論壇誌には過激すぎるし、『進撃の巨人』や『ムダヅモなき改革』では今時すぎるのかなぁ、といった感じで、こういうものを選ぶ際にはどうしても無難な選択になるものだということを実感しました。
by chatnoir009 | 2011-01-05 23:15 | インテリジェンス