守秘義務
2010年 11月 11日
海保のビデオ流出の件で守秘義務の問題が注目されています。これは今回の事件が、国家公務員第100条「職員は職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」に該当するかどうかです。ここでいう「秘密」の内容については、1977年の最高裁決定で「実質的に秘密として保護するに値するものをいい、国家機関が形式的に秘密指定をしただけでは足りない」としており、「秘」の指定がなくても秘密足りうるということになります。この捉え方は戦前からある、「自然秘(実質秘)」のことでしょう。戦前の国防保安法では、「仮に国家機密を記載した文書を一通作るべき場合に、ひそかに二通タイプに打ち、内一通を持っていたというような場合、それに国家機密の標記がなくても当然国家機密にあてはまる」、すなわち常識で考えて秘密にあたるものは基本的に機密文書となるというものです。
今回の問題のポイントは、①ビデオが職務上知り得るものであったのか、②ビデオの内容が秘密であったのか、という点になるかと思います。恐らく①に関しては、これは海保の人間でないと入手できないものであった以上弁明しようがないと思いますが、問題は②です。国家機密というのはその情報によって国に損害を与えうるものといえますが、今回のビデオ内容がそれ程のものになるのかは疑問であります。9年前の北朝鮮のものと見られる不審船と海保の銃撃戦のビデオはわずか2日で公開されているわけですから、今回のものはそれに比べれば秘匿度は低いと思います。今回ビデオを公開したことで国に損害を与えたかといいますと、何とも言えません。そもそもの問題は何を「秘」とするか、政府や各省庁の中でもコンセンサスがないことなのです。
で、結局今回の事案はどうなのか、という話ですが、まとめると「政府が海保のビデオを実質秘かどうか怪しいにも関わらず非公開とした。しかしビデオそのものには「秘」指定を行わず、一部の国会議員に公開した。海保の職員は職務上入手したこのビデオを流出させた。」という話になり、今のところは白でも黒でもないとしか言いようがありません。ここ数日、海保職員が義賊かどうかというような意見も聞かれますが、個人的には今回の事案によって「国家機密とは何か」という議論が高まることを期待しています。
なお、この一件に関しては来週の読売新聞の方にも寄稿させていただきました。
追記:今回の一件は、政策決定者が情報を捻じ曲げる「情報の政治化」の側面があることに気付きました。これは政策決定者が自分の志向する政策を進めるため、情報を無視、または曲解するものであります。例えば2003年のイラク戦争で米英の指導者は、イラクが大量破壊兵器を開発しているという方針を貫くため、イラクからのいい加減な情報を大量破壊兵器に無理矢理結びつけたわけです。
今回の件では、もともと秘匿するほどでない情報を隣国への配慮から秘密として取り扱おうとしたわけですが、一部議員への上映など泥縄的に対応してしまい、現場の反発を招いた形になるのでしょうか。なお「情報の政治化」の場合、大抵責任は政策決定者に帰することになります。
今回の問題のポイントは、①ビデオが職務上知り得るものであったのか、②ビデオの内容が秘密であったのか、という点になるかと思います。恐らく①に関しては、これは海保の人間でないと入手できないものであった以上弁明しようがないと思いますが、問題は②です。国家機密というのはその情報によって国に損害を与えうるものといえますが、今回のビデオ内容がそれ程のものになるのかは疑問であります。9年前の北朝鮮のものと見られる不審船と海保の銃撃戦のビデオはわずか2日で公開されているわけですから、今回のものはそれに比べれば秘匿度は低いと思います。今回ビデオを公開したことで国に損害を与えたかといいますと、何とも言えません。そもそもの問題は何を「秘」とするか、政府や各省庁の中でもコンセンサスがないことなのです。
で、結局今回の事案はどうなのか、という話ですが、まとめると「政府が海保のビデオを実質秘かどうか怪しいにも関わらず非公開とした。しかしビデオそのものには「秘」指定を行わず、一部の国会議員に公開した。海保の職員は職務上入手したこのビデオを流出させた。」という話になり、今のところは白でも黒でもないとしか言いようがありません。ここ数日、海保職員が義賊かどうかというような意見も聞かれますが、個人的には今回の事案によって「国家機密とは何か」という議論が高まることを期待しています。
なお、この一件に関しては来週の読売新聞の方にも寄稿させていただきました。
追記:今回の一件は、政策決定者が情報を捻じ曲げる「情報の政治化」の側面があることに気付きました。これは政策決定者が自分の志向する政策を進めるため、情報を無視、または曲解するものであります。例えば2003年のイラク戦争で米英の指導者は、イラクが大量破壊兵器を開発しているという方針を貫くため、イラクからのいい加減な情報を大量破壊兵器に無理矢理結びつけたわけです。
今回の件では、もともと秘匿するほどでない情報を隣国への配慮から秘密として取り扱おうとしたわけですが、一部議員への上映など泥縄的に対応してしまい、現場の反発を招いた形になるのでしょうか。なお「情報の政治化」の場合、大抵責任は政策決定者に帰することになります。
by chatnoir009
| 2010-11-11 21:14
| インテリジェンス

