謎の女性スパイ
2010年 07月 05日
最近、アメリカで逮捕されたロシアのスパイ団、特に「美人すぎる女性スパイ(!)」の件について尋ねられることが多かったのですが、あの一件は不明なことばかりですので正直よくわかりません。ところが先日、日本のインテリジェンスの現場でも同事件に関心が集まっているという話を聞いて、ちょっと気になり出して調べてみました。しかし基本的な情報はアメリカのマスコミが報道しているものしかなく、どこまでが事実なのか、謎の多い事件です。特に注目を集めている女性スパイ、アンナ・チャップマンに関してはわからないことだらけです。報道によりますとチャップマン氏は本名、アンナ・クシュチェンコ、父親はソ連の情報機関であるKGBの高官だったそうですが、2001年に英国人実業家、アレックス・チャップマン氏と結婚、しかし2005年に「何かに」目覚め、翌年離婚。その後ニューヨークで実業家として生計を立てながら、米国で人脈を築く。そして先月、同氏を監視していたFBIの工作にひっかかり逮捕、現在はマネーロンダリングの罪で取調べ中、とあります。一体彼女が米国でどのような活動を行い、どのような理由で逮捕されたのかがイマイチよくわかりません。逮捕の理由については偽造パスポート所持や、米政府に申告されていないロシア側の人間との接触など様々な情報が飛び交っています。
従ってチャップマン氏に限っていえば、逮捕の理由は機密情報を盗み出したとか、ハニートラップ云々といった話ではないようです。また気になって合衆国法典をぱらぱらと見てみましたが、引っかかりそうなのは783条(第50編23章)の「外国の工作員又は共産主義組織の構成員による秘密情報の受領又は受領の試み」、もしくは794条(第18編37章)の「外国政府を支援するための情報の収集叉は交付」あたりなんでしょうかね。「試み」でもアウトのようですから、その辺から察すると、FBIが通信傍受か何かで、チャップマン氏とロシア側の工作担当者のやり取りを把握していたという可能性も考えられます。ちなみに米国であれば1978年の外国諜報監視法(FISA)によって、米国内の外国人に対する監視、通信傍受には制約がありませんので(米国人に対する監視は様々な制約が課せられているようです)、我々外国人が一度目を付けられるとメールや通信に関しては簡単に読まれてしまうようです(まぁNSAはその辺のことを日常的にやってるんですが)。
ただチャップマン氏自身もアメリカの社交界やFacebookで相当目立つことをやっていたようですので、もし彼女が本当にスパイだとしたら、ちょっと信じがたいところはあります。彼女が重要なスパイであれば、ロシア側は彼女に対してスパイを偽装するための訓練を施すはずでしょうし、今の所そのような情報は流れていませんので、ロシアの情報機関にとって彼女はそれほど重要なエージェントではなかったということなのでしょう。逆に訓練を十分受けた「プロ」のスパイは今も米国内で淡々と活動しているのではないでしょうか。
冷戦が終わって西側とロシアの情報戦も終結したようなムードではありますが、実際はそんなことはなく、2001年にはロシアに捜査情報を流していたFBIのロバート・ハンセン捜査官が逮捕されていますし、翌年にはイギリスでラファエル・ブラヴォー氏がイギリスの民間企業BAEから不法に入手した情報をロシア側に提供する際に逮捕されています。我が国でも2008年1月、内調の職員がロシア側から情報提供の見返りに現金を受け取って懲戒処分となっており、ロシアのスパイ事案は対岸の火事とはいえません。特にイギリスは2006年のリトビネンコ暗殺事件以降、ロシアの情報機関とは激しくやりあっていますので、今回の件はそのようなスパイ戦争の一端が表に出てきただけかもしれません。
今回の一件はアメリカによる政治的な見せしめの可能性も否定できませんが、いずれにしましても米国内で一度に10人もの逮捕というのは前代未聞のようですし、米露首脳会談の直後というタイミングも気になります。しかし美しいバラには棘がある、のごとく、美女とスパイというのはいつの時代も何か関係があるんでしょうかね。何とも古典的なスパイ事案だということ以外はよくわからないままなのですが、明日のTBSラジオで本件について若干コメントさせていただく予定です。

従ってチャップマン氏に限っていえば、逮捕の理由は機密情報を盗み出したとか、ハニートラップ云々といった話ではないようです。また気になって合衆国法典をぱらぱらと見てみましたが、引っかかりそうなのは783条(第50編23章)の「外国の工作員又は共産主義組織の構成員による秘密情報の受領又は受領の試み」、もしくは794条(第18編37章)の「外国政府を支援するための情報の収集叉は交付」あたりなんでしょうかね。「試み」でもアウトのようですから、その辺から察すると、FBIが通信傍受か何かで、チャップマン氏とロシア側の工作担当者のやり取りを把握していたという可能性も考えられます。ちなみに米国であれば1978年の外国諜報監視法(FISA)によって、米国内の外国人に対する監視、通信傍受には制約がありませんので(米国人に対する監視は様々な制約が課せられているようです)、我々外国人が一度目を付けられるとメールや通信に関しては簡単に読まれてしまうようです(まぁNSAはその辺のことを日常的にやってるんですが)。
ただチャップマン氏自身もアメリカの社交界やFacebookで相当目立つことをやっていたようですので、もし彼女が本当にスパイだとしたら、ちょっと信じがたいところはあります。彼女が重要なスパイであれば、ロシア側は彼女に対してスパイを偽装するための訓練を施すはずでしょうし、今の所そのような情報は流れていませんので、ロシアの情報機関にとって彼女はそれほど重要なエージェントではなかったということなのでしょう。逆に訓練を十分受けた「プロ」のスパイは今も米国内で淡々と活動しているのではないでしょうか。
冷戦が終わって西側とロシアの情報戦も終結したようなムードではありますが、実際はそんなことはなく、2001年にはロシアに捜査情報を流していたFBIのロバート・ハンセン捜査官が逮捕されていますし、翌年にはイギリスでラファエル・ブラヴォー氏がイギリスの民間企業BAEから不法に入手した情報をロシア側に提供する際に逮捕されています。我が国でも2008年1月、内調の職員がロシア側から情報提供の見返りに現金を受け取って懲戒処分となっており、ロシアのスパイ事案は対岸の火事とはいえません。特にイギリスは2006年のリトビネンコ暗殺事件以降、ロシアの情報機関とは激しくやりあっていますので、今回の件はそのようなスパイ戦争の一端が表に出てきただけかもしれません。
今回の一件はアメリカによる政治的な見せしめの可能性も否定できませんが、いずれにしましても米国内で一度に10人もの逮捕というのは前代未聞のようですし、米露首脳会談の直後というタイミングも気になります。しかし美しいバラには棘がある、のごとく、美女とスパイというのはいつの時代も何か関係があるんでしょうかね。何とも古典的なスパイ事案だということ以外はよくわからないままなのですが、明日のTBSラジオで本件について若干コメントさせていただく予定です。
by chatnoir009
| 2010-07-05 21:50
| 国際情勢

