Strengthening the central intelligence machinery 2
2009年 12月 12日
12月初めにアメリカから安全保障の関係者が多数来日していたようです。彼らの懸念は現在揺れつつある日米同盟にあるのでしょう。私もインテリジェンスな人々との意見交換会に出席する予定だったのですが、体調不良のため欠席してしまいました(こんなのばっかりです)。
ところで以前本ブログで書いたイギリスの情報改革の話ですが、「あれを具体的に解説してほしい」との要望をいただきましたので、ここで簡単に述べさせていただきます。まず断っておきますが、内閣官房で公開されたレポートは要点がまとまっておらず、大変わかり難くなっています。さらに誤字も散見されることから、かなり急いで書かれた印象があります。恐らく100周年となる2009年内に発表しなければならない官房の大人の事情があったのでしょう。
あのレポートは2004年に公表されたバトラー報告書を受けて書かれていますので、あれを踏まえますとかなり理解しやすくなるかと思いますが、バトラー報告書に至る話も少し書かせていただきます。そもそも今回、改革の対象とされている合同情報委員会(JIC)は1936年に設置された組織です。歴代のJICの構成メンバーがどう変遷してきたのかを調べればJICの役割が自然と明らかになるのですが、簡単に言えば、大戦期における軍事部門主流の時代、冷戦期における情報部主流の時代、冷戦後のカスタマー主流の時代に区分できます。特に冷戦後は敵がわかり難くなったため、JICに政策官庁から多くのスタッフを引き入れて、カスタマーからの情報要求を重視したJIC運営を行います。ところがあまりにカスタマーである官邸や政策官庁を重視しすぎたため、2002年には「イラクが生物化学兵器を45分以内に配備できる」という誤った結論を導いてしまいました。翌年のイラク戦争はこの情報も開戦理由の一つになったわけですが、その後このいきさつを調査したバトラー報告書で明らかになったのは、JICがカスタマーからの圧力に負けて上記のような情報を上げてしまったということでした。バトラー報告書のポイントは、JICがカスタマーの圧力に影響を受けないような組織にならなければならない、というものでありまして、それが今回の報告書で実現されたわけであります。
従って今回の提言書では、①JICは情報分析、評価だけに専念する、②情報要求の把握、議会への説明、情報コミュニティーのコントロールは内閣官房のスタッフが行う、というものになりました。換言すればこれは内閣官房を強化し、内閣官房がナショナル・インテリジェンスを監視、運営する、というプランでありますが、個人的にこれは単なる官房組織の焼け太りと写ります。私が出席していた報告会でも各組織から異論が投げかけられていましたが、ハニガン補佐官の回答は前にも書いたように、「JICは組織関係ではなく、リクワイアメントで動く組織である」、というものでありました。とにかく新たな組織案がどうなっていくのかは、今後も引き続き見ていきたいと思います。
ところで以前本ブログで書いたイギリスの情報改革の話ですが、「あれを具体的に解説してほしい」との要望をいただきましたので、ここで簡単に述べさせていただきます。まず断っておきますが、内閣官房で公開されたレポートは要点がまとまっておらず、大変わかり難くなっています。さらに誤字も散見されることから、かなり急いで書かれた印象があります。恐らく100周年となる2009年内に発表しなければならない官房の大人の事情があったのでしょう。
あのレポートは2004年に公表されたバトラー報告書を受けて書かれていますので、あれを踏まえますとかなり理解しやすくなるかと思いますが、バトラー報告書に至る話も少し書かせていただきます。そもそも今回、改革の対象とされている合同情報委員会(JIC)は1936年に設置された組織です。歴代のJICの構成メンバーがどう変遷してきたのかを調べればJICの役割が自然と明らかになるのですが、簡単に言えば、大戦期における軍事部門主流の時代、冷戦期における情報部主流の時代、冷戦後のカスタマー主流の時代に区分できます。特に冷戦後は敵がわかり難くなったため、JICに政策官庁から多くのスタッフを引き入れて、カスタマーからの情報要求を重視したJIC運営を行います。ところがあまりにカスタマーである官邸や政策官庁を重視しすぎたため、2002年には「イラクが生物化学兵器を45分以内に配備できる」という誤った結論を導いてしまいました。翌年のイラク戦争はこの情報も開戦理由の一つになったわけですが、その後このいきさつを調査したバトラー報告書で明らかになったのは、JICがカスタマーからの圧力に負けて上記のような情報を上げてしまったということでした。バトラー報告書のポイントは、JICがカスタマーの圧力に影響を受けないような組織にならなければならない、というものでありまして、それが今回の報告書で実現されたわけであります。
従って今回の提言書では、①JICは情報分析、評価だけに専念する、②情報要求の把握、議会への説明、情報コミュニティーのコントロールは内閣官房のスタッフが行う、というものになりました。換言すればこれは内閣官房を強化し、内閣官房がナショナル・インテリジェンスを監視、運営する、というプランでありますが、個人的にこれは単なる官房組織の焼け太りと写ります。私が出席していた報告会でも各組織から異論が投げかけられていましたが、ハニガン補佐官の回答は前にも書いたように、「JICは組織関係ではなく、リクワイアメントで動く組織である」、というものでありました。とにかく新たな組織案がどうなっていくのかは、今後も引き続き見ていきたいと思います。
by chatnoir009
| 2009-12-12 23:35
| インテリジェンス