JARIC
2009年 11月 19日
日本の職場に復帰しましたので、本ブログの題名も「都内でインテリジェンスを学ぶ」とでも変えた方が良いのかもしれませんが、「ホワイトホール61番地」が結構気に入っているのでこのまま使っていこうかと思います。しかしどうも時差ボケを引きずっているのか、頭の冴えない日が続いております。そんな私を叱責するかのようにPhil Davies教授から新しい論文が送られて来ましたため、リハビリを兼ねて紹介させていただきます。
論文はReview of International Studies の最新号に掲載された、"Imaginary in the UK: Britain's trabled imaginary intelligence architecuture" というもので、イギリスの画像情報(IMINT)の成り立ちから現在までの経緯を追ったものであります。資料として英国公文書館の史資料が多く使われており、歴史的アプローチよりも社会学的な理論的アプローチを得意とする教授にしては、珍しい論文のような気がします。ただ初耳のことが多く書かれており勉強になりました。
この論文は国防情報部(DIS)の画像情報組織、合同偵察情報センター(JARIC)の変遷について分析されているものです。元々第二次大戦中に空軍の偵察情報部から発展した同組織は、冷戦中にはDISの組織となり、DISにとってもJARICは切り札となっていきます。なぜならイギリスのインテリジェンス・コミュニティーを形成する5、6は強力な人的情報源(HUMINT)を、政府通信本部(GCHQ)はエシュロンの一端を担う通信情報(SIGINT)を提供できたため、DISとしては画像情報(IMINT)の提供が組織の存在意義を高める意味でも重要でした。冷戦後、JARICはDISの管轄からJICによる直轄に権限を委譲する計画もあるそうなのですが、これにはDISも猛反発のようでしてイギリスにも組織間の縄張り争い(turf battle)があることが窺えます。
JARICはその設置時期から独自の偵察衛星は持っておらず、衛星写真に関しては1960年代のアメリカによるキーホール衛星の運用開始直後からアメリカに頼りっぱなしであったようです。当時、アメリカからIMINTを供給されていたのは、私の知る限りイギリスとイスラエルだけですから、これらの国々の間での情報協力の緊密さが見て取れます。冷戦後もJARICはこのアメリカとの関係を利用し、現在、アメリカが進めているFIA計画にも出資し、さらなる衛星画像の入手に努めているようです。
FIA計画とは、解像度十数センチの偵察衛星を常時20-30機運用することで、世界の主要拠点を数十分に一度観測できるようにするものです。偵察衛星の欠点の一つは、一日に同じ場所を何度も確認できないということでありますから、このFIA計画は世界の大部分を常にリアルタイムに近い状況で観測し続けるというフィクションの世界のようなものです。イギリスは自前の偵察衛星を持つことなしにこの計画に乗っているわけですから、これはいかにもイギリスらしいやり方で、我が国から見れば羨ましいの一言に尽きます。ただし情報の世界はギブ・アンド・テイクが基本ですから、イギリスはIMINTを提供される見返りとして、HUMINTやSIGINTをアメリカに提供しているのでしょう。
Davies教授の論文を拝読していて一つ気になったことは、IMINTの世界的な協力関係について「4 Eyes」と表現されていたことです。「4 Eyes」とは情報の世界におけるアングロ・サクソン同盟、英米加豪のことですが、これは本来エシュロン諸国を指す言葉として用いられる、「5 Eyes」(英米加豪ニュージーランド)を使うのが普通です。どうもIMINTに関してはニュージーランドが脱落してしまっているということなのでしょうか。教授によりますと、イギリスのインテリジェンスにおけるIMINTはこれから益々重要な情報源となっていくだろう、とのことでした。

1960年代の衛星写真による米国防総省。解像度は10メートル程度ですので細かい部分までははっきりしません。
論文はReview of International Studies の最新号に掲載された、"Imaginary in the UK: Britain's trabled imaginary intelligence architecuture" というもので、イギリスの画像情報(IMINT)の成り立ちから現在までの経緯を追ったものであります。資料として英国公文書館の史資料が多く使われており、歴史的アプローチよりも社会学的な理論的アプローチを得意とする教授にしては、珍しい論文のような気がします。ただ初耳のことが多く書かれており勉強になりました。
この論文は国防情報部(DIS)の画像情報組織、合同偵察情報センター(JARIC)の変遷について分析されているものです。元々第二次大戦中に空軍の偵察情報部から発展した同組織は、冷戦中にはDISの組織となり、DISにとってもJARICは切り札となっていきます。なぜならイギリスのインテリジェンス・コミュニティーを形成する5、6は強力な人的情報源(HUMINT)を、政府通信本部(GCHQ)はエシュロンの一端を担う通信情報(SIGINT)を提供できたため、DISとしては画像情報(IMINT)の提供が組織の存在意義を高める意味でも重要でした。冷戦後、JARICはDISの管轄からJICによる直轄に権限を委譲する計画もあるそうなのですが、これにはDISも猛反発のようでしてイギリスにも組織間の縄張り争い(turf battle)があることが窺えます。
JARICはその設置時期から独自の偵察衛星は持っておらず、衛星写真に関しては1960年代のアメリカによるキーホール衛星の運用開始直後からアメリカに頼りっぱなしであったようです。当時、アメリカからIMINTを供給されていたのは、私の知る限りイギリスとイスラエルだけですから、これらの国々の間での情報協力の緊密さが見て取れます。冷戦後もJARICはこのアメリカとの関係を利用し、現在、アメリカが進めているFIA計画にも出資し、さらなる衛星画像の入手に努めているようです。
FIA計画とは、解像度十数センチの偵察衛星を常時20-30機運用することで、世界の主要拠点を数十分に一度観測できるようにするものです。偵察衛星の欠点の一つは、一日に同じ場所を何度も確認できないということでありますから、このFIA計画は世界の大部分を常にリアルタイムに近い状況で観測し続けるというフィクションの世界のようなものです。イギリスは自前の偵察衛星を持つことなしにこの計画に乗っているわけですから、これはいかにもイギリスらしいやり方で、我が国から見れば羨ましいの一言に尽きます。ただし情報の世界はギブ・アンド・テイクが基本ですから、イギリスはIMINTを提供される見返りとして、HUMINTやSIGINTをアメリカに提供しているのでしょう。
Davies教授の論文を拝読していて一つ気になったことは、IMINTの世界的な協力関係について「4 Eyes」と表現されていたことです。「4 Eyes」とは情報の世界におけるアングロ・サクソン同盟、英米加豪のことですが、これは本来エシュロン諸国を指す言葉として用いられる、「5 Eyes」(英米加豪ニュージーランド)を使うのが普通です。どうもIMINTに関してはニュージーランドが脱落してしまっているということなのでしょうか。教授によりますと、イギリスのインテリジェンスにおけるIMINTはこれから益々重要な情報源となっていくだろう、とのことでした。

by chatnoir009
| 2009-11-19 22:13
| インテリジェンス

