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DIS

 本日、RUSIでDIS(国防情報本部)のトップである、クリス・ニコルズ中将の講演会が行なわれましたので参加してきました。DISは1964年に設置された国防省のインテリジェンス機関であり、日本の防衛省情報本部と同じ位置付けになります。スタッフ数は4000人強、その内半分近くがシビリアンの分析官であり、約1割がホワイトホールの本部に勤務しています(ということは分析に携わるスタッフ数が約400人ということになるのでしょうか)。実を言うとDISはRUSIのお隣さんでして、私も初めてRUSIを訪れる際に間違って入りそうになりましたが、もちろん入り口は厳重に警備されていますので、追い返さた経験があります。元々DISは国防省のビルを間借りしていましたが、それが手狭になったためにホワイトホールのOld War Office ビルに移ってきた経緯があります。
 中将の言葉を借りればDISの任務は、「軍事作戦を後方支援することにより、作戦における不確実要素を出来る限り排除していく」ことにあるそうです。またDISは国防省の組織であると同時に、イギリスのインテリジェンス・コミュニティーの一員でもありますので、JIC(合同情報会議)に出席し、政治家に対するレポートを作成する義務も負っています。中将は、DISの評価レポートがイギリスの政策や戦略に影響力を与えることが判っているため、レポートの作成には大変慎重にならざるを得ない、と回想されていました。
 現在、国防省・DISの一番の懸案はアフガン情勢ですので、中将から具体的な話は出ませんでしたが、アフガン情勢を想像しながら講演を聞いていると、何となく話が理解できたような気がします。DISは情報収集、分析の専門組織でして、情報収集手段は現地に派遣したスタッフからのヒュミントや、合同偵察情報センター(JARIC)による偵察情報を主な情報源としていますが、中将によりますと最近は新聞等の公開情報や、GCHQからの通信傍受情報も利用しているとのことでした。こういった生情報はホワイトホールの分析官の手にかかり、オペレーション用のインテリジェンスとして現地部隊に提供されるそうです。イギリスではセキュリティ・クリアランス制度がきっちりしていますから、国防省、陸海空軍、また他省庁に対しても、情報が必要な部局に対しては組織のわけ隔てなく情報が提供されているそうです。講演の傍聴者の中には米軍関係者もちらほらいらっしゃいまして、質疑応答の際には「イラクではDISからの情報提供が米軍の軍事作戦の役に立った」とのお話から、米英のインテリジェンス協力の親密さを垣間見ることができました。
 またDISの場合は世界各国で実際に軍事行動している部隊に対して情報を提供しているわけですから、5や6に比べると迅速な情報の提供が求められており、タイムリーさと質を両立させることができるのはDISにしかできない、とのことでした。

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by chatnoir009 | 2009-10-01 22:35 | インテリジェンス