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Borvington Tank Museum

 久しぶりにボービントン戦車博物館へ行ってきました。ボービントンの展示は大変魅力的なのですが、ロンドンから電車で2時間強かかる上、博物館へのアクセスも悪いので、今回でようやく2度目となりました。ちなみに私はどちらかと言えば戦車好きですので、宮崎、松本、庵野監督ら大御所の中では宮崎派ということになるのでしょうか。作品の好みはまた別の問題ですが。。。
 さて今回の目的は何と言ってもレストアの完了した、ティーガーIを見ることでした。前回訪れた際にはまだレストア作業中でしたので、今回はその雄姿を拝むことを楽しみにしていたわけであります。このティーガーIは世界に5台しかないレストアされたもので、さらにここのティーガーは世界で唯一稼動するという大変貴重なものであります(動画はこちら)。このティーガーは1943年にチュニジアで英軍によって鹵獲された第504重戦車大隊のティーガー131号でありまして、砲塔前面直下に直撃弾を受け、それが元でタレットに不具合が生じたため破棄されたそうです。本来であればティーガーのような最新兵器は破棄する前に爆破しなければならないのですが、本機体はなぜかそのまま放置されていたようです。そして英軍はこの鹵獲したティーガーを英軍のChertsey 基地で徹底的に分析します。この時、分析レポートを作成したのが、現在、軍事情報史の研究で著名なピーター・ガドギン少佐(当時)でした。ガドギン少佐自身も英陸軍王立戦車連隊の戦車兵として北アフリカでティーガーと遭遇し、その際に負傷したそうです。ガドギン少佐の分析は当時としては的確なものであり、ティーガーは火力、防御力、そして照準システムが大変優れているが、反面、機動力に欠けるという結論でした。そして英陸軍はこの戦車に対抗するために、ティーガーの撃破マニュアルを作成し、クロムウエル巡航戦車に17ポンド砲を搭載してティーガーの装甲を打ち抜くべく努力するわけですが、有名な1944年6月のヴィレール・ボガージュの戦闘で、何と1台のティーガーに15両のクロムウエルが撃破されてしまうという事態が生じてしまいます。これはやはりドイツ軍のタンク・キラー、ミハエル・ヴィットマンSS中尉の活躍によるところも大きいですが、どうも緻密な情報分析が戦場にうまくフィードバックされなかったのかな、という印象を持ちます。
 ティーガーの話をし出すときりがないですが、このティーガーの脇にはドイツ軍の戦車兵コスチュームセットが置いてありまして、ドイツ軍の軍服を着て戦車と写真が撮れるようにと配慮されています。さすがは戦勝国、これをドイツや日本の博物館でやるとかなりの議論を巻き起こすことになってしまうでしょう。ちなみに私が同行させていただいた方は、スケールモデルの作成に執念を燃やしておられるので、実物を見る際にも「この転輪とキャタピラの擦れ具合は参考になる!」、「フェンダーはこの薄さでないと!」と通の観点から観賞されていたようです。

ティーガーI 131号
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初期型に特徴的なエア・クリーナー
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ヘンシェルの他にポルシェ砲塔型も展示されています
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パンターの塗装も新しくなっていました
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III号戦車も味わい深いです
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by chatnoir009 | 2009-08-07 23:25 | その他