人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

Bodleian library

 イギリスは今が最高の季節ですが、しばらく英公文書館とオクスフォードのボドレアン・ライブラリーにこもっての史料調査に明け暮れていました。こちらに来てから何人かの研究者に言われたのですが、今、イギリスやアメリカの公文書館では日本人の若い研究者が大挙して押し寄せ、皆が数週間でデジタルカメラにデータを収めて帰っていく光景をよく見かけるそうです。ほんの一昔前でしたら、公文書館での調査は手書きやパソコンで史料を書き写していたので、大変時間のかかる作業でした。私も大学院生の頃は1年強、毎日公文書館に通い詰め、パソコンでの写経を試みていました。最近のデジタルカメラの普及によってこのような労力は大幅に軽減され、短期の滞在でもそれなりの資料収集ができるようになったことはとても喜ばしいことです。 
 ところが彼らに言わせれば、「使う予定の」資料を大量にデジカメに撮って帰っても、いざ論文や本を書き出す段になればまた別の資料が必要になるし、大量の一次資料をただまとめて撮って帰るだけではあまり意味がないのでは、ということになります。恐らく彼らの言いたいことは、きちんと二次文献や一次資料を読み込み、論文を書き始め、必要になったらまた資料に戻る、というサイクルの繰り返しが必要だということでしょうか。私の経験上、デジカメを使い出すと資料もろくに読まず、機械的に画像を取ってしまいますので、データが膨大となる上、後で読み返すとあまり使わない資料を取ってきたと気づくことがよくあります。今は論文などを書きながら必要に応じて史料を調査していますので、よほど必要とならない限りデジカメも使わず、手書きのメモなどで済ませています(ボドレアンはデジカメ禁止ということもあるのですが)。要は文章を書きながら資料調査を行なうと読む際にも焦点が絞られ、漫然とデジカメを撮っているよりは効率的に作業がはかどるということですので、資料調査は自分が何かを書き進めながら並行して行なうのが良いのかもしれません。ただこれはずっと資料のある土地に滞在するというのが前提ですので、外国の場合は留学でもしない限りなかなか難しい注文であるかとも思います。ちょうど『歴史とは何か』でかのE.H.カーも同じようなことを書いていることに気が付きましたので、今更ながらですが引用しておきます。

 「(資料を)読み進むにしたがって、書き加えたり、削ったり、書き改めたり、除いたりというわけです。また、読むことは、書くことによって導かれ、方向を与えられ、豊かにされます。書けば書くほど、私は自分が求めているものを一層よく知るようになり、自分が見出したものの意味や重要性を一層よく理解するようになります。」

Bodleian library_e0173454_22333973.jpg

by chatnoir009 | 2009-06-25 21:58 | その他