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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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Italian Intelligence

 またもやキングスカレッジで、今度は米国海軍大学校のブライアン・サリバン教授を招いた研究会に出席してきました。サリバン教授の研究は、ムッソリーニ政権下のイタリアのインテリジェンスに焦点が当てられていまして、なかなか興味深い内容となりました。最近話題の「ヘタリア」のせいか、イタリアのインテリジェンスに対するイメージはぱっとしなかったのですが、サリバン教授のお話を拝聴してそのような偏見を拭い去ることができました。教授によりますと、イタリア政府も1990年代後半にインテリジェンス関連資料を公開しまして、1945年までの本格的な情報史研究が可能になったそうです。この情報公開によってイタリアのインテリジェンスの再検討が可能になりまして、その論点は、①イタリアは1920-30年代に東欧、バルカン、ソ連各国にヒューミント網を築くのに成功していた、②イタリア国内の各国大使館、公使館に対しても、ソ連・ドイツ以外にはすべて浸透していた(ということは日本大使館にも!?)、③ただしムッソリーニは従来の軍警察(カラビニエリ)の情報機関を掌握することはできず、新たに軍事情報部を統合した、というものであります。
 細かい話に関しては詳細が定かではないのですが、教授によりますとイタリアの情報機関は1939年4月には既にドイツのポーランド侵攻を掴んでおり、このことがムッソリーニを5月の独伊軍事同盟に向わせた、といった興味深いエピソードを拝聴しました。またコンスタンティニ兄弟による情報収集活動など初耳の話が多く、大変勉強になりました。そして驚くべきはやはり日本陸軍があれほど手こずったソ連への浸透を、イタリアの情報機関が成功させていたということでしょうか。イタリアの情報機関は1920年からハンガリーやソ連の情報機関と情報協力をしつつ、両国に浸透していったそうですので、その手口は相当巧妙であったといえます。
 私がこの講演を聞いて再認識したのは、第二次大戦開戦経緯から大戦中の歴史記述が、英米の情報研究の影響を色濃く受けているということです。もちろんこれは英米における情報史研究の成果の顕れなのですが、多くの歴史書は、「アメリカの暗号解読がミッドウェイの勝利を導いた」、「イギリスの欺瞞作戦がノルマンディ上陸作戦を成功に導いた」といった連合国のインテリジェンスの威力を強調し、枢軸側のインテリジェンスに関してはまるでほとんど意味がなかったかのような無頓着ぶりです。この点については、私の隣にいらしたジョン・フェリス教授もご賛同のようでした。恐らく今回のイタリアの事例のように、日独ソ中のインテリジェンスに関して調査が進めば、第二次大戦をめぐる歴史の書き換えすら生じることになるかもしれません。やはりこの時代のインテリジェンスは今後も追求していくべき一大テーマであると感じました。

 そう考えると、今後、イタリアのインテリジェンスは「ヘタリア」よりも「ガンスリンガー・ガール」のイメージで捉えないといけませんね(笑)

Italian Intelligence_e0173454_2034396.jpg

by chatnoir009 | 2009-06-01 20:36 | インテリジェンス