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「魔法は探し求めている時が一番楽しい」


by chatnoir009
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クラブ

 最近、友人に招かれ、二度ほどクラブに足を踏み入れました。ここで言う「クラブ」とは日本で言うところのクラブではなく、英国特有の社交・親睦の場である「紳士クラブ(gentlmens club)」になります。現在、ロンドンだけでも百近いクラブがあると言われていますが、最初に私が招かれたカールトン・クラブは、1832年にトーリー(保守党員)のために設置された大変格式の高いものでした。内装の豪華さは言うに及びませんが、やはり保守党御用達らしく、19世紀に活躍したダービー伯から最近のサッチャーまで、怱々たるメンバーの絵画が所狭しと飾られており、それだけでも圧倒されてしまいました。
 元々このクラブは、トーリーが1832年の選挙法改正を阻止できなかったことを反省し、党員の結束を強める目的で設置されたわけです。従ってカールトン・クラブでは過去様々な政治家の会合が開かれてきました。例えば本クラブは、1922年10月19日に保守党の政治家達が、彼らの指導者にあたるオースティン・チェンバレンに反旗を翻し、ロイドジョージとの連立を解消した、政変の舞台となったことで知られています。また1990年にはIRAの爆弾テロの標的とされ、実際に被害に遭っています。日本で言えばカールトン・クラブは、一見さんお断りの高級料亭にあたるのでしょうか(よく知りませんが)。
 二度目は、日英同盟が調印されたことで有名な、ランズダウン・クラブへの招待を受けました。ここはカールトンの近く、高級住宅地メイフェアのど真ん中に位置するクラブですが、カールトンに比べるとカジュアルで、あまり緊張せずにすみます(とは言え、内装はアールデコ調のとても上品なものです)。一階の部屋には、この部屋で同盟が調印されたとごく控えめな説明が掲げられていました。今ではバー兼歓談室となっているようです。またこちらは外国人でも会員費用さえ払えば会員になれるようです。
 このような内々のクラブで腰を落ち着け、酒を飲んだり食事をしながら会話をすると、イギリス人から色々な本音のようなものが聞けるわけです。これがパブだと大抵はフットボールやラグビーの話になり、応援するチームが違うと険悪なムードになったりするのですが(これはその辺のパブでもホワイトホールのパブでも全く同じです。ちなみに私はアーセナルを応援しています)、さすがにクラブではどう持っていってもフットボールの話にはなりません。政治ネタが多くなります。例えば保守党員にとってのチャーチルやサッチャー評とか、英米の特別な関係というのは幻想に過ぎないとか、そんな話を窺い知ることができます。
 ロンドンにはこのような会員制クラブがたくさんあるわけですが、その中には軍人のクラブやインテリジェンスのクラブもあり、そこでは毎晩のようにその筋の人々が集まって、表ではできないような話をしているそうです。インテリジェンスに関しては、カールトンクラブのすぐ近くにある、リフォーム・クラブの中に、Cryptos という集まりがあり、そこに関係者達が集うそうです。
 研究のために外交やインテリジェンスの資料を読んでいても、当事者たちの皮膚感覚までなかなかたどり着けていないのかな、とたまに思うことがあります。私もささやかな読書のみで英米の「特別な関係」を信じていた無邪気なクチですが、それを実際に実務で経験された方から、「そんなものは幻想に過ぎない」などと言われてしまうと、考え込んでしまうわけであります。恐らく、インテリジェンスの分野は不明瞭な部分が多いですから、やはり現場の感覚というのは資料を読む上でも重要になってくるのではないでしょうか。
 私もいずれ機会があればリフォーム・クラブにも潜入してみたいのですが、クラブに参加するためにはまず会員の知り合いを作ることが必要ですので、そこはやはり個人的なインテリジェンスを駆使して情報を集めていく必要がありそうです。
by chatnoir009 | 2009-04-22 01:28 | その他