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イラン情勢

 報道によりますと米英仏の艦隊がイランへの圧力の意味でペルシャ湾に入ったそうです。これはかなりキナ臭くなってきました。まさにペリーばりの砲艦外交ですが、艦隊を出してしまうと相手が譲歩するか戦争か、という風に選択肢の幅が狭くなってしまいます。またアメリカ政府は我が国に対してもイランからの石油輸入をストップすることを求めてきており、これは早急に検討すべき問題となってきています。
 恐らく日本政府は日米同盟を遵守し、また平和国家としてイランの核開発を許すわけにはいかないという観点から、アメリカを支持せざるを得なくなるでしょう。しかし2003年のイラクの教訓として、本当にイランの核開発が危険な段階まで進んでいるのか、ということを一旦検討する必要があります。一説によりますとイランは十分な量のウランを確保できていないため、今年度中に核兵器を持つことは困難だとも推測されています。我が国もこの点を精査しないといけないのですが、日本の対外インテリジェンスはイランに情報網があるわけでもなく、また理系の分析官も恐らくいないでしょうから、政策決定に必要なインテリジェンスを導き出すことができません。イランであればイスラエルやイギリスが情報を持っているはずなので、それら国々から情報を提供してもらわないと、また根拠の薄い対米従属が繰り返されることになります。我が国に情報や外交力があれば独自にイランとアメリカの仲介役にもなれそうな気がするのですが、現状では難しいでしょう。
 ただ戦争となるとイランがホルムズ海峡を封鎖しようとしても、アメリカはこれを武力で排除することになりますし、陸上戦闘はイラクの二の舞になるだけですので、瀬戸際外交を続けるイランも偶発事故や読み違いをしない限り戦争には踏み切らないと思います。
 しかし中長期的な視点で言えば、アメリカは中東へのコミットメントをできる限り減らそうとしているように見えます。エネルギー問題に関してはアメリカ西部に埋蔵されている莫大なオイルシェールを有効活用できそうになってきたようですので、石油を理由に中東問題に血眼になる必要はなく、それと反比例するかのようにオバマ政権は環太平洋へのコミットメントを増しつつあるようです。アメリカが中東から去ると困るのはイスラエル、サウジアラビアあたりでしょうが、とにかく今回のイラン問題はアメリカが今後中東にコミットし続けるかどうかの試金石となると思います。果たしてまたイスラエル・ロビーが勝つのか、それとも政権がそれに抵抗するのか、いずれにしても3月のイラン大統領選挙まではどちら側もやり難いのではないでしょうか。
by chatnoir009 | 2012-01-29 23:14 | 国際情勢