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スポーツ・インテリジェンス

 先日、国立スポーツ学研究センターで、国家インテリジェンスとスポーツ・インテリジェンスに関する意見交換をさせていただきました。以前にもこのブログでも書きましたように、スポーツ・インテリジェンスの分野は実際のスポーツの現場でも、またアカデミアでも運用されているわが国では数少ない「活きた」インテリジェンスであります。
 前回は現地バンクーバーでの情報収集活動やJOCと情報部門のインテリジェンスのやり取りなどを学びましたが、今回もスポーツ・インテリジェンスについて色々と勉強させていただきました。例えばオリンピックのメダル数は、メダルのポテンシャルを持ったアスリートの母体数とメダル獲得確率という数字によって弾き出されていること、逆に言えば母体数か率を上げることでメダルの数を押し上げることができるということです。
 じゃあなぜ今までそれをしてこなかったのか、と突っ込みたくもなりますが、端的に言えばカネの問題でありまして、国からの補助金が潤沢でなかったということです。しかし先週、「スポーツ基本法」が半世紀ぶりに改正されたことで、国や行政がスポーツ振興策に責任を持つことになりました。今後、スポーツ振興や強化策は国の仕事になるということで期待が持てます。 
 また国際スポーツの分野では、今でも大陸ヨーロッパ、アメリカ、イギリス+コモンウェルス、そしてその他という勢力図になっているようですが、アジアの台頭も目覚ましいとのことで、日本がここに割って入っていくには中韓との連携が必須とのことでした。私はプレミアリーグとF1が好きでよく観ているのですが、やはりここにアジアの選手が入っていくのは至難の業だというのは何となく実感できます。
 あとは、意外とイミント(!)も応用できるとのことでした。我々の世界でイミントは偵察衛星からの画像情報のことで、イミントとスポーツの関連というと、冷戦期のアメリカのイミント分析者が、キューバの軍事顧問団が第三世界に派遣されるとそこに野球場が建設されるという事実(キューバ人は野球という娯楽が必要)を掴んでいたということぐらいしか思い浮かびませんでしたが、スポーツ選手のプライベートな写真から、日頃使っている道具やサプリメントの種類、また選手間の交友関係等が割り出せてしまうということには驚きました。逆に言えば、このような写真が選手個人のブログなどで公開されないよう、JOCは情報管理を行う必要があるということになります。いや~奥が深いです。
 今やスポーツ・インテリジェンスの分野は大学などで研究されている上に、スポーツ基本法という法律を得て、今度はスポーツ庁設立まで議論される勢いです。これに対して外交・安全保障分野のインテリジェンスは、研究は低調、根拠法はなし、対外情報庁なんて夢のまた夢、といった厳しい状況ですので、何ともうらやましい限りであります。いや、何とかしないといけないのですが…。
by chatnoir009 | 2011-06-20 23:22 | インテリジェンス