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RAF Museum

 久しぶりにロンドン郊外にあるRAF Museum(英空軍博物館)に行ってきました。同博物館はロンドンの中心からNorthern Lineで40分ほどのColindaleというところにあります。ここにはキングス・カレッジの学生の頃から数えると、通算5,6回は訪れたと思います。当時は第二次大戦中の戦略爆撃をエッセーのテーマにしていたこともあり、またちょっとしたマニアでもありましたので何度も通ったものですが、やはり論文を書くにあたって、現物や現場を知っているのと知らないでは差が出てくると思います。当時は戦略爆撃の中心となったランカスターやB-17爆撃機を見て、その大きさに圧倒されたものでした。さすがにあんな巨大な爆撃機が編隊を組んで都市の上空に表れたら、その心理的な恐怖心は大変なものになります。これに対してルフトヴァッフェは、なるべくこういった爆撃機を市民の見ている前で迎撃し、その心理的恐怖心を和らげ、士気を高めようとしたらしいです。ちなみにイギリスにはまだ現役のランカスターが存在しており、記念式典などには今でも飛行しています。2002年にエリザベス女王の母后が崩御された折には、やはりランカスター爆撃機がスピットファイアー戦闘機を護衛に従えてロンドン上空を飛行しました。
 私は同博物館に新館が設置されて以降、訪れたことがありませんでしたので、5年ぶりぐらいに同館を訪問しました。何といっても新館の目玉は、世界中でもここにしか保存されていない、日本陸軍の五式戦闘機であります。本機は太平洋戦争末期に投入された実用性重視の機体でして、私の中では「四式戦=ティーガーI(性能は高いが信頼性に欠ける)、五式戦=パンター(性能よりも実用性)」といった感じで勝手に整理されています。一緒にいった友人(戦闘機については全く知らない)から、「五式戦は凄かったのか」、と聞かれましたので、即興でガンダムになぞらえて、(隣に展示されていた)P-51マスタングをガンダムとするなら、五式戦がゲルググで、(さらにその隣にあった)メッサーシュミットMe262がビグザムぐらいのものだろう、と説明してみましたが、これが的を射ているのかよくわかりません。
 いずれにしても同博物館のレストアと保存は素晴らしく、五式戦も当時の面影を髣髴とさせる美しい仕上がりとなっていました。これに比べると私が小学生の頃に一度見た、京都嵐山博物館の四式戦「疾風」が不憫でなりません。小学生の私にとって日本軍の戦闘機は何でもゼロ戦だったので、当時は特に何とも思わなかったのですが、後に聞くところによると、疾風は野ざらしにされた上にパーツの盗難に遭ったため、当初は飛べるほどの状態だったのが、すっかり駄目になってしまったそうです。そう考えると疾風も歴史的資料として同館のような設備の整った施設で保存、展示してほしかったと悔やまれますが、日本の軍事博物館の貧弱さを考えますと、思い切ってこのRAF Museumを始めとする欧米の軍事博物館できちんと管理してもらった方が良かったのかもしれません(呉の大和ミュージアムはかなり欧米のそれに近かったような印象を受けましたが)。
 基本的に日本の軍事博物館は戦争の悲惨さを訴え、「反戦」を学ぶ場となっていますが(もちろんこれは重要なことです)、こちらの軍事博物館は戦争を美化するわけでもなく、戦争や軍隊とは何かを客観的に学ぶ場となっているようです。多くの子供たちが連日のようにRAF Museumを訪れ、軍用機について熱心に学んでいるのを目の当たりにすると、色々と考えさせられます。イギリスには帝国戦争博物館を始めとする軍事博物館が豊富に揃っており、次世代の戦史家が次々と育つ土壌があるわけです。英公文書館にしても連日のように小学生の社会見学があり、小学生の頃から歴史資料に接しているわけですから、歴史家が強くなるわけです。次は久々にボービントン戦車博物館でしょうか。

五式戦
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Me262
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P-51
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by chatnoir009 | 2009-05-18 07:51 | その他